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米連邦議会襲撃から2年、警官遺族がトランプ氏を提訴

ドナルド・トランプ前米大統領の支持者による連邦議会議事堂襲撃から2年の1月6日、議事堂やホワイトハウスでは2年前の事件を振り返る式典が行われた。これに先立つ5日には、事件翌日に死亡した議会警察警官のパートナーが、「不法死亡」訴訟をトランプ氏に対して起こした。

ジョー・バイデン米大統領は6日、議事堂を暴徒から守った功労者14人を「英雄」とたたえ、「大統領市民勲章」を授けた。受賞者には、暴徒の集団と単独で対峙(たいじ)し、暴徒を上院本会議場から遠ざけたことで、マイク・ペンス前副大統領や大勢の上院議員を守ったとたたえられている議会警察のユージーン・グッドマン警官が含まれた。

2020年大統領選の結果を覆すよう、トランプ氏とその陣営から度重なる圧力を受けつつ応じなかった複数の州政府・州議会の幹部も表彰された。
襲撃の翌日に脳梗塞のため亡くなった連邦議会警察のブライアン・シックニック警官も、市民勲章を授けられた。シックニック警官の両親、チャールズさんとグラディスさんが息子に代わり、バイデン大統領から勲章を受け取った。
バイデン大統領は式典で、議会襲撃事件はアメリカの歴史における「変曲点」だったと述べ、「あのようなことがここアメリカで起こりえるなど、信じがたいこと」だが、「この国の民主主義において確かに保証されていることなど何もないのだと、思い出すきっかけになった」と強調した。

遺族はトランプ氏を提訴
シックニック警官は襲撃事件の最中には負傷しなかったものの、遺族は訴えの中で「(議会襲撃の)暴力によって引き起こされた負傷」の結果、死亡したと主張。警官を襲った群衆を「意図的に扇動した」として、トランプ氏を訴えた。

「襲撃の参加者の多くが事件後、国に尽くすようトランプ被告に直接命令されたと信じて、その命令に従って行動したと明かしている」と、遺族は訴えの中で主張。さらに、トランプ氏がシックニック警官の公民権を侵害したとして、暴行や過失による損害への賠償1000万ドルを請求した。

トランプ氏はこの訴えについてコメントしていない。
議会襲撃は、バイデン氏の大統領選勝利を議会が認定している最中、その手続きを阻止しようとトランプ氏の支持者が議事堂に侵入して起きた。

この直前、トランプ氏は議事堂から約2キロ離れた広場で支持者集会を開き、大統領選は不正だったため上院議長を兼ねるペンス副大統領(当時)は結果を覆すべきだと力説していた。

トランプ氏はその際の演説で、集まった支持者に「みんなして議事堂まで歩こう」、「必死になって戦わなければ、国を失ってしまう」と呼びかけていた。同じ演説では、「平和的に、そして愛国的に、声を響かせる」ようにも語りかけていた。

昨年まで民主党が多数を占めた議会下院の特別委員会は昨年12月、トランプ前大統領を反乱の扇動など4つの容疑で刑事訴追すべきだと司法省に勧告した。米議会が大統領経験者の刑事訴追を勧告するのは初めてだった。

FBIはさらに300人を追跡
議会襲撃事件では、事件の渦中に議事堂に入ろうとしていた女性が警官に射殺された。当日、議事堂敷地内にいた3人が心臓発作などのため死亡している。

米司法省によると、議会襲撃事件に関してこれまでに約960人が訴追され、連邦法違反で起訴された460人以上が有罪を認めている。

米連邦捜査局(FBI)はさらに300人を当日の暴力行為の疑いで追跡しており、その中には事件前夜に共和党本部と民主党本部の前にパイプ爆弾を仕掛けた疑いの容疑者も含まれる。FBIは4日、この容疑者の逮捕につながる情報提供に50万ドルの懸賞金を支払うと提示した。