●家族は皆、離れていった

そんな被告人は法廷で、「官品」といわれる、黄緑色の作業着のような服を着ていた。これは家族や友人など、服を差し入れてくれる人がいない被告人が着ていることが多い。被告人には妻も娘も、また息子もいるのだが、黄緑色の服には家族との距離を感じさせる。

そしてやはり実際に、家族全員と距離ができていることも分かった。証拠によれば「妻は被告人のDVにより心を病み、入院した」といい、かつて同居していた息子家族は、被告人を残して出て行った。

検察官「奥さんや娘さん、息子さん家族……あなたに原因があって離れたのでは?」

被告人「そりゃそうです。価値観が違う。俺の価値観と、女房や子供の価値観は違う。今回それを初めて知った」

家庭の中で長らく、我を通して生きてきた結果、孤独な生活となった被告人。娘婿への筋違いの恨みも、寂しさゆえか。

しかし、寂しい生活に至った原因も、被告人自身によるところが大きい。そのうえ当の娘婿や家族からすれば、恐怖以外の何者でもない。実際に娘婿は証人尋問で「次は殺される」と強い恐怖を訴えていた。