江戸前の寿司や天ぷらに使われる「穴子」は、アナゴ科のマアナゴ(Conger myriaster)という種類だ。体の側面に白い点々がずらりと並んでいるのが特徴で、沿岸の水深100メートルより浅いところに多く生息している。

 日本ではもともと、食用の「穴子」といえば、ほぼマアナゴのことを指してきた。ところが近年、スーパーなどの店頭に並ぶ「穴子の蒲焼き」や「煮穴子」といった加工品のなかには、マアナゴとは種類の異なる、ある深海魚が使われるケースがよくみられるようになった。

 その魚とは、「イラコアナゴ」(Synaphobranchus kaupii)だ。

 マアナゴよりずっと深い、水深236メートルから3200メートルに生息している。一般に「深海魚」とは、おもに200メートル以深で暮らす魚のことをいうので、イラコアナゴは、れっきとした深海魚だ。

 イラコアナゴは北海道~沖縄諸島、台湾などに分布するが、国内で多く漁獲されているのは三陸地方だ。

 イラコアナゴの加工品は、食品トレーに入った状態や真空パックなどの形で流通することが多く、どんな姿の魚なのか、私たち消費者が目にする機会はまずない。そこで、漁獲されたイラコアナゴを、漁業関係者に分けていただいた。

 それがこの写真だ。

 黒っぽい体色に、大きく裂けた口──。その外見は、マアナゴとはまったく異なっている。

 イラコアナゴはこの大きな口で、深海にすむイカやエビの仲間、そして、他の深海魚を丸呑みにして食べるという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ad38c18ff23c9151a20bd7efa5bf9179f7f5c7a6

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