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タイ入国、中国人以外もワクチン義務化 運用に困惑も

タイ政府は中国の海外旅行規制の緩和を受けて、9日から新型コロナウイルス対策の入国規制を再強化する。中国人に限らず全ての外国人を対象に、ワクチン接種証明書の提示などを義務づける。従来は未接種でも入国できた。新たな規制の運用は不透明な部分があり、渡航予定者や航空会社に困惑が広がっている。

タイ民間航空局が7日までに航空各社に対して、9日から31日まで適用する入国規制を通達した。18歳以上はワクチン接種の完了を条件とする。必要な接種回数はワクチンの種類によって異なる。接種が未完了でも、感染から回復して180日以内であるか、接種できない医学的理由を示す医師の手紙があれば、入国を認める。一部の国からの渡航者には、感染時の治療費を賄える保険への加入も求める。

同局は航空各社に乗客がタイ入国に必要な書類を保持していることを確認するように要求した。保持していない場合、出発地で搭乗を拒否される可能性がある。タイの空港は、乗り継ぎのみで入国しない乗客は書類の提示を不要としている。

ワクチン接種が未了なら、タイ到着時に感染を調べる検査を受ければ入国を認めるとの情報もあるが、政府からの公式発表はまだない。

新しい入国規制を直前に通達された航空会社は対応に苦慮している。ある航空会社の幹部は「運用方法の詳細が分からず対応を決めかねている」と話す。数日間は様子見をし、タイへ向かう出発地の空港では必要書類の確認をしない方針という。

入国規制の変更方針は5日にタイの保健省や運輸省の大臣らが合意した。アヌティン副首相兼保健相は「特定の国からの旅行者を差別しない」と述べ、中国人のみを対象にした特別な措置は実施しないと表明していた。

タイ政府は入国規制を撤廃済みで、これまでワクチン未接種でも入国を認めてきたが、中国人に限らず全ての外国人に接種を義務づけることについて、「差別的な対応を避けるように求める中国政府に配慮した」(外交筋)との見方が出ている。

タイ政府観光庁は中国人観光客の増加を見込み、2023年の外国人旅行者数予測を従来の2000万人から2500万人に上方修正した。新しい規制が厳格に長期間運用されれば、旅行者数の回復に影響が出そうだ。