https://news.livedoor.com/article/detail/23506173/
ここからが本題なのですが、Z世代を中心にミニマリストを志向する若者が増えているというニュースがあります。先月、日経新聞に掲載されてネットでも少なからずの話題になったのが「風呂なし物件、若者捉える」(2022年12月17日掲載)という記事でした。「昭和の時代をほうふつさせる「風呂なし」賃貸物件が、令和の若者の間で再び脚光を浴びている」という書き出しの世相記事です。
都心であるにもかかわらず賃料は4万~6万円。トイレはあっても風呂はないという古い下宿向けの賃貸物件を社会人になってからも好んで借りる若者が増えているというのです。そして節約よりもシンプルな暮らしをしたいという理由からそれを選ぶというわけです。彼らの持ち物は本当に最小限であり、おかげで部屋は広く使えています。
ただネット上で論争になったのが、このようなトレンドは若者の貧困化を美化しているだけではないのかという議論です。
ちなみにそのような生活も必ずしも悪いとは言い切れません。30年ほど昔の議論で「イタリア人は貧しいのかそれとも幸せなのか」という議論がありました。イタリアは21世紀に入ってEUが発展するようになってから一人当たりGDPも3万5000ドルに増加しましたが、1990年当時は2万ドル前後と欧州の中でも比較的貧しい先進国でした。
ところが実際に当時イタリアに住んでいた日本人に言わせると、イタリア人は貧しくても日本人よりも人生が豊かだと言うのです。収入は少なくても休日は町に出て濃いコーヒーを味わい、ワインを飲みながら毎日イタリアンの食事を楽しみ、大勢でワイワイ騒ぎながら人生を語り、政治を語り、愛を語り、大声で歌い、そしてサッカーの試合を見てブラボーと叫ぶ。当時、GDPがはるかに高かった日本と比べてもイタリア人の生活の方が豊かではないかというのです。
その背景には2000年以上もの時間をかけて蓄積されてきたイタリアの社会インフラの豊かさがあったのだと思います。古いものではローマ時代からの石畳があり、築何百年の集合住宅にいまだに人が快適に住める。一人当たりGDPというフローの数字では貧しくとも、社会全体のストックを勘定にいれたらイタリアは豊かな国である。だから人々も豊かな気持ちで生活をしているのだというのが「イタリア人は幸せだ」という主張の論拠でした。
■日本も社会インフラは豊かになったが…
さて、そのようなイタリア人の一人当たりGDPが2万ドル前後だった時代はもう30年近い昔の話です。今ではIMF(国際通貨基金)が発表する世界の一人当たりGDPランキングで見ると日本が27位でイタリアは28位。イタリアはかなり裕福になり、私たち日本はかなり世界の中での地位を下げてきました。