両足を失った妹がもう一度歩けるように、義足を買ってあげたい。
彼を駆り立てたのは、家族への思いだけだった。
そして、義足の費用を工面するため、彼が向かったのは戦場だった。

「俺の人生を変え、今生きているこの悪夢を乗り越えるためなんだ」
こう語気を強めて話すのは、シリアの首都ダマスカスに暮らすムハンマドだ。年齢は20代半ばだという。

内戦が続く母国で、両親ときょうだい2人を失い、唯一残った妹のヤスミンも両足を失っている。
その彼は、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへ向かおうとしていた。
妹の義足を買う金のため、傭兵として。


「もう家族はあなたしかいない。兄さん、行かないで」(ヤスミン)
 
「復讐のために行くんじゃないよ。また2人で暮らすために、お金を稼いでくる。義足を買って、お前がまた歩くところを見たいんだ」(ムハンマド)

 「兄さんが死んで帰ってくるくらいなら、足がないままの方がいい。帰ってきて、無事に帰ってきて、何もいらないから」(ヤスミン)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2023/01/13/28350.html