―― チゲって辛いイメージですが、甘みが大切なんですか?
冷水 今日はコチュジャンを使わないので、大根で甘みを出すんです。
―― コチュジャンを使わないチゲですと……!?
冷水 市販のコチュジャンを使うと、どうしても味が均一になってしまうような気がしませんか? 味が強すぎて、コチュジャンの味しかしないなぁと思うんです。
―― たしかに……、わかります。でも甘みは大根でカバーするとして、旨味やコクの部分はどうするんでしょうか?
冷水 それが今回の秘密兵器です。
―― な、納豆!?
冷水 以前、韓国で納豆入りのチゲを食べたことがあるんですけど、それがすごくおいしくて。納豆は旨味とコクがたっぷりなので、コチュジャンを入れなくても十分なんです。
辛みの部分は韓国の粉唐辛子を入れれば、バッチリです。
―― コチュジャンが一手に担っていた要素を、色々な食材で分担するんですね。その方が多様性が生まれて、奥行きのある味になりそうです。
冷水 煮干しからも強い旨味が出ますから、きっと「あとひと声!」に応えられると思いますよ。
―― 楽しみです。
冷水 さて、大根が軟らかくなったら、鍋に酒と生姜(しょうが)のすりおろし、納豆、韓国粉唐辛子、みそ、ごま油を加えて10分ほど煮ます。
―― 納豆は思ったほどネバネバしてませんね。
冷水 混ぜて粘りを出していないし、火を通すとそこまで粘りは出ないんです。においもそこまで感じないでしょう? 納豆が苦手な人でも食べられると思いますよ。
―― それはいいですね。
冷水 最後に豚バラ肉と豆腐を加えて、温まったら味を調えて完成です。
―― おお、普段食べているチゲ鍋より随分色が薄いですね。いつもは真っ赤でドロッとした、地獄鍋みたいな感じなので(笑)。
冷水 地獄(笑)。基本の出汁がしっかりしていないと、ついコチュジャンを入れすぎたりして、どんどん味が濃くなってしまうんです。
でも出汁の味が薄いと、どれだけ調味料を足しても「何か足りない……」となってしまうんですね。
―― そこが「もうひと声!」の正体だったのか!
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