>>52
ああ。私が初めて日本を訪れたのは、今から15年ほど前のことだ。  それまで私が日本に抱いていたイメージは、武士道、サムライ、強さ、礼儀、そして無敵の男が持つ一分の隙もない精神力、そんなものばかりだった。  ところが日本に来た私は失望した。  確かに深い尊敬の心を感じたが、それは強さや精神力ではなく、むしろ弱さから生まれるものだったからだ。 いくら尊敬の心を感じ、厳しい規律を目にしても、そこにはなぜか強さがまったく感じられなかった。 ――「弱さ」というのは、どういうことでしょうか?  言い換えるなら、人々がシャボン玉の中で暮らしているような気がする、ということだ。 尊敬の心が感じられても、それは他人の人生を邪魔したくないと怖がっているからだったり、他人の意見を聞きたくないからだったりする。  私は日本が大好きだ。少なくとも文化についてはそう言いきれる。しかし、その弱さをを少し残念に思っているのだ。