なぜ、雪に向かうのか 3つのバイアス

なぜ、人は大雪など危険が待ち伏せてしまう状況でも、外に出たり車で出かけたりしてしまうことがあるのか。

防災心理学の専門家は、人間が持つ3つの心理的な癖が関係していると言います。

ひとつは正常性バイアスです。

ふだんと異なることが起きていても、それを正常(ふだんと同じ)の範囲内ととらえ、心を平静に保とうとする心の動きのこと。

今は雪が見えるけど、そうたいしたことじゃないよ、などと思って、安心しようとする心の動きです。

日常生活を送る上では、いつもと異なることが起きた時に、心の状態を保つために大事な動きではあるのですが、これが災害時だと危険と隣り合わせとなります。

専門家はまだ大雪になっていない時に、この心の癖が出ると指摘しています。

(兵庫県立大学 木村玲欧教授)
「特にまだ大雪でなくて、路面が凍結しているくらい、ちょっとうっすら積もっているくらい、外をちらっと見ただけではその変化に気付かないようなときに、こうした『正常性バイアス』というのが起きやすいのです」

「(情報があっても)多分大丈夫だろう、日常と一緒だろう、という考え方の癖が出てしまう傾向があるんです」

そして、楽観主義バイアス。

過去の経験から今回だって大丈夫!と経験に基づいて思ってしまう、心の動きです。 

「『楽観主義バイアス』は、今までの自分の人生、例えば大雪とか路面の凍結でそれほど大きなけがや事故などに巻き込まれていない、それなら今回だってまあ多分大丈夫だろう、と思ってしまうことです」

「過去の経験をもとに楽観的に判断してしまう、そういう考え方の癖です。そう考えてしまいがちな傾向の人がいるとも言えます」

さらにもうひとつ、同調性バイアスという考え方の癖もあると言います。

周囲の人に合わせてしまう心の動き、集団の中にいるとついつい周りの人たちと同じ行動をとってしまう心の動きです。

これも日常生活では、多くの人とうまくやっていくための協調性につながり、異なる意見でも、それについていくことがあります。

ただ災害時では、他の車も雪の中を走っているから大丈夫と考えてしまうと危険で、様々な情報から本当に安全なのかどうか、よく考えないと時として命の危険が迫ることもあるのです。
「『同調性バイアス』が働く時、ほかの人もやっている、だから自分も一緒にやってしまわないと不安だ、自分も大丈夫だろうと思ってしまうこともあります。こういうことも考え方の癖なんです」

木村教授はこうした人間の心理の特性を踏まえた上で、今回は、これまでの経験が役に立たないと考えることが命を守るためにも大切だとアドバイスしていました。
「今回はまれに見る寒波がきているわけで、私たちの日常生活での経験というのが役に立たない可能性があります」

「今回は、もしかしたらけがをしてしまうかもしれない。交通事故に巻き込まれてしまうかもしれない。このように『今回は、もしかしたら』という心の危機管理でしっかりと対策を取り、もし外出しなくてもいいようなときにはなるべく外出をしないで、今回の大雪の危機を乗り越えていただきたいと思っています」
気象の状況はわずかな時間で大きく変わることがあります。

いまは大丈夫だから、前は大丈夫だったから、みんなも行っているから。

そう思って自分を安心させないことが大切な対策のひとつです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230123/k10013958061000.html


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