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“吸引分娩”で産まれた赤ちゃんが約半日で死亡 産科クリニックに5090万円の賠償命じる判決 助産師がチアノーゼ症状に気づくも医師に報告せず 大阪地裁

出産の時に赤ちゃんの頭をひっぱる「吸引」分娩で長男を亡くした母親が、大阪市内の産科クリニックを相手に起こした裁判で24日、大阪地裁はクリニックに賠償を命じる判決を言い渡しました。

 高瀬実菜美さん(35)は、2017年に大阪市内の産科クリニックで長男の柊(しゅう)ちゃんを出産しましたが、柊ちゃんは約半日後に死亡しました。

 死因は、出産時に頭部を引っ張る「吸引分娩」によってできた「帽状腱膜下血腫」による出血性ショックでした。

 高瀬さん夫婦は「吸引後に適切な経過観察や搬送をしなかった」などとして2018年、クリニックに損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしていました。

 クリニック側は、経過観察で柊ちゃんの症状を確認したときには、「特段の異常所見とは認められなかった」などと反論して請求の棄却を求め、裁判は4年にわたり続きました。

 判決で大阪地裁は、柊ちゃんに「チアノーゼの症状が出て全身の色が悪くなっていることは、『帽状腱膜下血腫』の合併症が生じていることを疑うのに十分な所見」で、搬送していれば助かっていた可能性が高いと指摘しました。

 そのうえで、症状に気づいた助産師が医師に報告をしていなかったとして、クリニック側に5090万円あまりの賠償を命じました。

 (高瀬実菜美さん)「柊にこの判決結果を報告できるというのが嬉しいと思って涙が出た」「助けてあげられなかったという後悔が一番大きいので、ママがおかしいと気づいた段階で、助産師なり看護師に状況を確認していれば、もっと早く搬送してもらえれば、という思いはずっと持っているので、病院や医師だけの責任にはどうしても思えなくて」「私の責任は続いていく」。

 一方、クリニックは柊ちゃんに、日本産科婦人科学会のガイドラインを超える6回の吸引をしていましたが、判決では、「ガイドラインは必ず5回までとしなければならないとするものではなく、事情によってはやむを得ない」という医師の鑑定から、「不適切だったとはいえない」と判断しています。

 それでも高瀬さんは産科に関わる医療者に、「ガイドラインの基準を越える吸引で生まれた子どもに異変がないかどうか、しっかり観察してほしい」といいます。

 (高瀬実菜美さん)「赤ちゃんの体調が悪くなれば、早急に医師に報告して、次の病院に搬送していただくような体制作りをしてほしい」「(母親たちには)妊娠出産に関して知識を持つ、自分でどういう分娩方法で出産するのかよく考えて後悔ない選択をしていただきたい」。

 被告のクリニックでは、当時担当していた医師は退職し、現在、別の名前で営業しています。

 判決を受けて、「周産期医療に携わる医師として、前医療法人が起こしたことだとはいえ、悲しいことだと考えています。日々、これからも努力、善処していきたい」と回答。

 クリニックの代理人弁護士は、「判決文を精査したうえで適切に対応します」と答えています。