中東外交「サウジでは中国製スマホでなければ使えない」「アメリカに傍受されるより中国の方がいい」の衝撃

 この対極にいるのが中国だ。習近平国家主席は12月のサウジ訪問で大歓迎を受けた。両国企業は、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)による技術協力など、30件以上の投資案件で合意した。

 サウジアラビアではすでに10年ほど前から、ファーウェイなど中国通信企業の機器でなければ、SIMカードを入れても作動しない状況になっている。サウジは国内の携帯電話の通話を24時間体制でモニターし、当局が危険だと考えるキーワードに反応した通話を追跡・処置しているとされる。もちろん中国もこの通話を監視できることになるが、サウジアラビアの人々に言わせれば、「中国も怖いが、米国の方が怖い」ということらしい。

 米国もエシュロンを使って通信を傍受・監視している。サウジにとって、中国は「人権とか民主主義とかうるさいことを言わない相手」に見える。中国は独裁体制だから、習近平氏さえOKなら、面倒な稟議など経ずに、すぐに投資してくれる。サウジは富裕国家だから、「債務のわな」を警戒する必要もない。

 サウジアラビアにとって、「民主主義」を旗印に世界をリードしようとするバイデン米政権は、小うるさく見える存在だ。サウジ自身、民主主義国家ではないが、女性の自動車運転やサッカーの一部観戦許可などの改革を進めている。これも、サウジ国内の通話を監視するなかで、国民の不満をうまく吸収し、政策に反映している結果だとも言える。

 欧米諸国からすれば、評価に値しない行動だろうが、サウジ国内ではムハンマド氏が高い支持を得ているという。サウジアラビアが現体制に自信を持てば持つほど、欧米諸国に追随するよりは、中国やロシアなどともうまく付き合って、利益を追求したほうがよいと計算することになると考えられるのだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4774a09dc025b835b159094d66f91ce5334520d0?page=2