'95年に電池メーカーとして中国・深センで創業したBYDは、'03年から自動車事業に参入した。'08年には米国の著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が投資したことで一躍、名を馳せた。
現在の社員数は29万人超と、日産やホンダを上回ってトヨタの約37万人に迫り、ITエレクトロニクス、都市モビリティ事業なども手掛ける。
'21年12月期の売上高は、前年比38%増の2161億元(約4兆842億円)。'22年3月にはガソリン車の製造を中止し、EVとプラグイン・ハイブリッド車(PHV)に経営資源を集中させた。
日産自動車の元技術者で、複数の中国の自動車メーカーで勤務した経験がある島影茂氏は、BYDの経営についてこう評価する。
「中国の自動車会社では珍しく地に足が着いた動きをしている。現実的な対応がうまい会社だ」
それを如実に示しているのが、日本企業への接近である。
たとえば'10年には、群馬県の金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、ものづくりの力を飛躍的に向上させた。
さらにBYDは、得意とする薄型のEV向け「ブレードバッテリー」などで多くの特許を取得しているのだが、意外なことに「自動車業界でそれらの特許を最も多く引用しているのが、実はトヨタ」('22年11月7日付日本経済新聞)だという。
EVで出遅れるトヨタはBYDの技術を高く評価していると見られ、'20年4月、両社でEV研究開発の合弁会社を深センに設立すると発表している。その成果の第一弾が、'22年10月に初公開した、中国市場専用の共同開発EV「bZ3」だった。
BYDが、トヨタをはじめ日本の製造業にとっての「よきパートナー」であり続けるだけならば、大いに結構と思うかもしれない。だが、同社の経営をさらに詳しく見ていくと、彼らの抱く「野望」がそれに止まらないことは明白だ。
EVの時代になると、自動車の生産もパソコンのように、水平分業(複数の企業が得意分野を分担する形)の産業構造になるとの見方もあるが、BYDは完全に垂直統合モデルを推進している。巧みな提携戦略で、あらゆる技術の内製化を進めているのだ。
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