東京五輪組織委元次長、立件へ 公募前に落札企業を伝達か

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が発注したテスト大会の計画立案業務を巡る談合事件で、テスト大会の運営を担った組織委大会運営局の元次長が入札参加業者を公募する前、特定の企業に落札者が決定していると伝えた疑いがあることが関係者への取材で判明した。複数の落札企業などを独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で捜査している東京地検特捜部は、元次長が受注調整に欠かせない役割を果たしたとみており、企業側との共同正犯として立件する方針を固めた模様だ。

特捜部と公正取引委員会は、組織委が競争入札で発注した26件を落札した9社のうち広告大手「電通」「博報堂」など8社と、下請けに入った2社を2022年11月に同法違反容疑で家宅捜索した。このうち一部の企業の担当者は、特捜部の任意の事情聴取に談合を認めていることも新たに判明した。特捜部は複数の企業の担当者も立件する方向で詰めの捜査を進めている模様だ。

関係者によると、組織委大会運営局は17年、テスト大会の運営に支障が生じないよう、広告代理店やイベント会社のスポーツイベントでの実績などを調査するよう電通に依頼。電通と組織委は18年春ごろまでに各社が大会運営を希望する種目や競技会場を一覧表にまとめた。

この過程で、元次長は「武蔵野の森総合スポーツプラザ」(東京都調布市)で開催予定のバドミントンの業務を希望する博報堂の担当者に、広告会社「東急エージェンシー」の名前を挙げ、「そこは東急」などと伝えた疑いがある。一覧表の同プラザの欄には、実際に東急エージェンシーが記載されていたという。

その後、同プラザは隣接する味の素スタジアム(近代五種などの会場)と一体で業務が発注され、東急エージェンシーが18年8月に約3400万円で落札した。博報堂の担当者は元次長との一連のやり取りを特捜部に説明しているという。一方、東急エージェンシーの幹部は22年11月の取材に「博報堂と競り合って我が社が勝ったという認識だ」と語った。

不当な取引制限の成立には、企業間の競争が制限されたことの立証が必要で、特捜部は元次長が他の入札にも関与したとみている。関係者によると、元次長は特捜部の聴取に「落札者が決まっているという趣旨の発言をしたつもりはない」などと談合への関与を否定しているという。【二村祐士朗、井口慎太郎、松尾知典、柿崎誠】

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