https://www.gepr.org/contents/20221123-01/
本題に戻る。1000億ドルでさえ達成できないのに、今回のCOP27で相場が一気に10倍の1兆ドルになった。日本円なら140兆円だ。
日本も1割ぐらいの負担を求められるとすると、そうすると年間14兆円だ。14兆円といえば消費税なら7%分にあたる(現在、消費税率は10%で税収が20兆円)。
気候変動目的での途上国への支援のために、7%消費税増税しますといって、ハイOKという日本人はまずいないだろう。
ちなみに米国は、前述のNature記事によると、これまでにおいてすら、年間1000億ドルの内で66億ドルしか出していなかった。
これ以上の拠出を議会が認めなかったからだ。
米国は国連を嫌いな人が多いし、敵対的な国であれ何であれ途上国に支援をするという発想には拒否反応を示す人も多い。
先日の中間選挙では、下院で共和党が過半数になったから、これから当分、ますます米国は拠出を増やせない。
予算を主に審議するのは下院であり、共和党は民主党が進めるグリーンディール(米国では脱炭素のことをグリーンディールという)には強く反対している。
報道ベースでは、COP27開始当初は、先進国は一枚岩になって基金設立に反対していたが、
会期終了予定の前日の17日になって欧州が譲歩し、米国もそれに同調して、基金設立に合意したという。
この間、日本が何をしていたのかは筆者は知らない。
米国は、同調したといっても、民主党のケリー気候変動特使が率いる交渉団である。
議会が1ドルも出さないであろうことなど百も承知で、民主党のポジション取りとして合意したにすぎない。
日本は米国に梯子を外されて、お金を払うのだろうか? 京都議定書の時にも似たようなことがあった。
時の米国民主党は、京都議定書は絶対に議会を通らないと知りながら、京都合意をした。だが米国は離脱して日本は梯子を外された。
結局日本は、排出権購入のためにずいぶんとお金を使った。だが今回は桁が違う。
最後に、結論は以前書いたのと同じなので、再掲しておこう:
当然、年間1兆ドルなど先進国が飲めるはずはない。この交渉はこれから何年間も行われることになるだろう。
だが「パンドラの箱」は空いてしまった。先進国は自らのCO2ゼロも到底不可能なのに、更に毎年1兆ドルを途上国に支払うなど、出来る筈もない。
気候危機だと煽って途上国に圧力をかけてきたことがブーメランになって帰ってきて、活路が無い袋小路に嵌ってしまった。
今年のCOP27では、気候変動枠組条約がいよいよ南北問題の場となった。先進国の代表にとっては甚だ居心地の悪い場所となるので、
今後、先進国の関心は下がって行くのではないか。
かつて先進国主導のGATTやWTOに対抗して、途上国主導でUNCTADが貿易に関する南北問題に取り組んだ。
だがこれは先進国が乗り気でなく衰退した。
気候変動枠組条約も南北問題の場となると、衰退に向かうのかもしれない。COP27は、「終わりの始まり」なのだろうか。