妊娠中の妻や5歳の娘を惨殺し火を放つ…そんな米死刑囚が執行直前に日本人ジャーナリストに語った"本音"
https://news.yahoo.co.jp/articles/e28b946074426fc73108dfd40ddf88ef7a9a8f77

2009年12月17日、タラント郡の一家で、悲劇は起きた。
当時、病院の夜間警備員だったハメルは、仕事を終え自宅に戻ると、
妊娠中の妻ジョイ・ハメル、5歳だった娘のジョディ、義父のクライド・ベッドフォードの3人を
バットやナイフで殺害した。その後、自宅に火をつけ、その場を立ち去った。
死亡した3人の気道に煤(すす)が検出されなかったことから、放火の前に絶命していたことが分かっている。

(中略)

事件当日、警察や消防隊が現場で消火作業にあたる中、ハメルが姿を現した。
赤の他人を装い、警察に話しかけた。
しかし、後の捜査で、彼の服から血痕が見つかり、犯人の特定につながった。

(中略)

3人を殺害したこの事件は、テキサス州ダラス近郊のトップニュースになった。
犯行からわずか18カ月で、ハメルに死刑が宣告された。

話を聞く限り、ハメルはとても落ち着いた様子で過去の自己分析を行ない、
反省とも取れる言葉を口にしていた。言い訳も、ほとんど聞こえてこなかった。
過去の罪を認め、悔やむこの男に死刑は本当に必要なのか。
そんな思いが、私の心の中に浮かんでいた。

■「刑務所では何一つ悪事を働いていない」

とはいえ、ストレスを抑制できず、凶悪殺人事件を起こしてしまった人間に同情などしていいのだろうか。
殺害方法はあまりに残酷だ。ハメルは私に想像できるような人格の持ち主ではないのかもしれない。
一部の証人は、彼を「善人」と語っているが、一部の証人は「悪魔」だと話している。
ところが、これまでのところ、彼から悪魔の匂いがまるでしてこなかった。

(中略)

死をもって償うことなど、ハメルには予測できなかったはずだ。
年間1403件(1日約4件)もの殺人事件が相次ぐテキサス州で、
わずか200人しかいない死刑囚監房に送られるとは夢にも思わなかっただろう。
「予告された死」を全うせねばならぬ運命に迫られた彼は今、どのような思いでいるのか。

「死刑はもっとも凶悪な犯罪のためにあるものです」

ハメルは、当然のような口ぶりでそう言った。
家族3人を殺し、放火して逃げた人間が、そう言い放ったことは驚きだった。
彼にとって、何が凶悪犯罪なのか。
少なくとも、自ら犯した事件は死刑に当たらないということだろう。
そこには、彼なりの理由があるようだった。

■「私は過ちは繰り返さない人間だ」という主張

「あの事件以外は、人生で何一つ悪いことをしていないのです。
仮釈放なしの刑(絶対終身刑)であれば、周りと問題になることはない。
それが、私に与えられるべき最悪の刑だと思うのです。
だから、死刑と言われた時には、とても驚きました。もう危険人物にはならない。
危険なことをするとすれば、ここの仲間との闘争で自己防衛する時くらいです。
でも、自分から誰かに危害を加えるようなことはしない。私は、暴力的な人間ではないのです」