「私たちの目から見ても、どうして守らなければならないのかと首をかしげてしまうようなものもあります」
そう話すのは、綾里さん(仮名・24歳)だ。彼女が勤めるクリスチャン系の女子高には、とにかく厳しい校則があり、その校則をなんとかしてかいくぐろうとする学生と教員との攻防が毎日のように繰り広げられている。
綾里さんの同僚であるA先生は、どちらかというとオタクっぽく見える数学の先生だ。長身でスポーツマンの英語教員や、知的でクールだと女子ウケのいい社会科教員に比べ、そもそも人気のないタイプだが、校則を破る生徒の摘発に命をかけている先生の言葉を真に受けて、真面目に、生徒のスカート丈や化粧をしているかどうかのチェックを行った。
「まあ、あんまりそのチェックの方法もよくなかったと私は思います。スカート丈のチェックの際には、実際に生徒の膝を触って、『僕の手で膝が触れるということは、スカート丈が短くて膝が出ているということだから校則違反だ。』って言ったそうです。化粧の有無についても、『キスされるのかと思った。』と生徒が言うくらいに接近して、その子のまつ毛や唇を触って、自分のその触った指に色がつかないかどうか見たそうです。『キモい』『セクハラ』『変態』って生徒たちが言うのもまあ、仕方ないなって私は思ってしまいました」
綾里さんはそう言って笑う。でも、A先生の状況はどんどん笑えないものになっていった。
A先生としては、何一つやましい気持ちなどなく、ただただ校則を守っていない生徒がいないか調べただけなのに、生徒たちから異様に嫌われて、近づくだけで悲鳴をあげられるようになった。
誇張して話すことで楽しむという傾向のある女子高生たちは次第に、「A先生にいやらしい目で見られた」とか「A先生が化粧チェックの時に女子を触った手のにおいを嗅いでいた」とか「A先生は、生徒から没収した化粧道具をコレクションしている」という噂を流し始める。
「真面目過ぎたのでしょうね、A先生は。ある日突然キレちゃって、『お前たちはどれだけ俺を馬鹿にする気だ!』そう叫んで学校を飛び出していきました。で、今は休職中。女の子に一度嫌われたらどれだけ恐ろしいかということがよくわかる例です」
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