国内携帯キャリア1位のNTTドコモが、販売代理店ドコモショップ(DS)を100点満点・5段階(最高=85点以上の「Ⅴ」、最低=35点未満の「Ⅰ」)で評価し、最低ランクの「Ⅰ」となった店舗については、次の3カ月で「Ⅲ」ランク(50点以上75点未満)を獲得しない限り、閉店対象としていることが「 週刊文春 」の取材で分かった。ドコモが独自に構築する「統一評価制度」に関する内部資料を入手した。

スマホ端末を転売して利ざやを稼ぐ「転売ヤー」の存在は社会問題化している。ドコモを巡っては、小誌はこれまでDSが店舗ぐるみで転売ヤーを動員していたこと、その背景に厳しいノルマがあることなどを報じてきた。同社の井伊基之社長(64)は今年度時点で約2300店舗あるDSを2025年度までに約700店舗閉鎖する方針を打ち出しており、各店舗は生き残りをかけて必死にノルマをこなしている。

店舗を転売ヤー依存にする“地獄のノルマ”

そんな中、小誌はドコモ本体がDSに課すノルマと評価に関する内部資料を入手。それを紐解くと、店舗を“転売ヤー依存”にする“地獄のノルマ”の実態が見えてきた。

「統一評価制度の評価項目・評価ランク」と題したスライドには、ドコモ本体がDSをいかに評価しているかが記されている。この資料によると、評価期間は3カ月、評価項目は「営業活動インセンティブ」など4つで、計100点満点。その上で、DSは〈評価項目の実績に応じてスコア化し、ランク付け〉され、85点以上が「Ⅴ」、75点以上85点未満が「Ⅳ」、50点以上75点未満が「Ⅲ」、35点以上50点未満が「Ⅱ」、35点未満が「Ⅰ」と5段階にランク分けされている。

DS関係者が明かす。

「評価は四半期ごとに行いますが、最低ランクの『Ⅰ』を取ってしまった店舗は次の3カ月で『Ⅲ』=『50点以上75点未満』を取らないと閉店対象になってしまう。ドコモ本体からそう通達されているのです。ですから、なんとしてでも、毎回、『35点』を死守しなければならないのです」

そのため、各DSはなんとかして「35点」を捻出すべく、奮闘しているというが、達成するのは「本当に大変なこと」(同前)だという。

例えば、評価項目の一つの「営業活動インセンティブ」。4つある評価項目のうち、100点中50点と最も多く配点されている。これは新規契約獲得など通常の営業活動に付与されるもので、転売ヤー依存の原因とされるMNP(携帯電話番号ポータビリティ)による他社からのポートイン(乗り入れ)数のほか、ガラケーのFOMAからスマホへの買い替え数を示す「マイグレーション数」などが評価対象となっている。

また、評価項目のうち加点項目の3つはそれぞれ「ランクA」から「ランクG」まで7段階の基準で評価されており、「営業活動インセンティブ」に関しては、最高が50点(ランクA)、最低が0点(ランクG)とされている。

まともに営業しているDSは「0点です。これが現実なんです」

ところが――。DSを運営する大手代理店の幹部が打ち明ける。

「現在、転売ヤーに頼らずにまともに営業している全国のDSの9割以上は、『営業活動インセンティブ』はランクG。つまり0点です。これが現実なんです」

この項目が0点だと、閉店対象を免れる「35点」獲得は相当困難になる。ここにDSの“転売ヤー依存”を作る構造的理由があるのだ。

「生き残るには、身銭を切って転売ヤーに依頼し、目標数値を達成するしか道はないのです」(前出・DS関係者)

DSの評価項目についてドコモに見解を尋ねたところ、次の回答があった。

「販売目標については、直近の販売状況等を踏まえて適切に設定をしております。詳細については営業戦略に関わる内容のため、回答を差し控えさせていただきます」

現在配信中の「 週刊文春 電子版 」では、ドコモ“地獄のノルマ”のカラクリが示されている内部資料、各DSに課される目標値を策定する“2つの指標”を詳しく解説した上で、「ほぼ不可能」という厳しい評価基準に直面するDS関係者の悲痛な叫びなどを報じている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cc49fec0b86e7fdca4fcb9addcac0e522dc47753