2021年5月30日の早朝、滋賀県甲賀市の新名神高速道路で、大型トラックが軽乗用車に追突した。
軽乗用車には男女5人の若者が乗っていた。うち18歳と20歳の男性2人が亡くなった。
事故はその後、残りの3人が逮捕される事件に発展した。
亡くなった18歳男性の父親(56)は事故が起きた日、妻と2人で兵庫県の自宅に居た。普段と変わらぬ日曜日だった。
昼過ぎ、電話が鳴った。「滋賀県警ですが息子さんが事故に遭いました」。
電話を切ったあと、訳が分からず、息子の携帯に何度も電話をかけた。呼び出し音は鳴るが、つながらない。
甲賀署(滋賀県甲賀市)へ向かうため、妻と一緒に自宅近くの駅へ向かい、また電話をかけた。
誰かが出たが、2~3秒で切れた。「もしもし」と呼びかける暇もなかった。
それからは、「電源が入っていません」との音声が聞こえるだけになった。
子どもは1人だけで、結婚して7年目に授かった。
算数・数学が得意で、小学生のときに学習教室に通い、表彰状やトロフィーをもらった。
電車が好きで、駅名や電車の種類をたくさん覚えた。興味のあることに、記憶力を発揮した。
一方、争いごとは苦手。テレビでも暴力的なシーンを嫌がった。
登場人物が戦ったりするものより「サザエさん」や「ドラえもん」のような、ほのぼのとした番組を好んだ。
中学生のときは生徒会長を務めた。
2021年4月、大学入学と同時に実家を出て、一人暮らしを始めた。本人の希望だった。
滋賀県警から父親に電話があったのは、その2カ月後だった。
https://www.asahi.com/articles/ASR216TNMQCTPTJB00C.html