https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/07674/

システム内製の理由は「コスト削減」、日本企業の残念な実態がガートナー調査で判明

ユーザー企業はシステム内製を志向しているものの、その目的が「コスト削減」になってしまっている――。ガートナージャパンが2023年1月に公表したユーザー企業の内製化・外製化に関する調査リポートから、こんな実態が浮き彫りになった。
ガートナージャパンは2023年1月18日、「日本におけるソフトウェア開発の内製化に関する調査結果」を発表した。自社の今後の開発方針を「内製化」と回答した割合は54.4%となり、「外製化」の35.4%よりも高い結果となった。同調査は2022年4月、日本国内のユーザー企業のソフトウエア開発従事者を対象に、自社の内製化・外製化に対する考え方についてアンケートを実施したもの。有効回答者数は300人だった。

内製化の理由には「正直驚いた」とアナリスト
 「ユーザー企業のシステム内製の意欲は着実に高まっている」。同調査を手掛けた、ガートナージャパンの片山治利リサーチ&アドバイザリ部門シニアディレクターアナリストは、昨年の調査がなく単純比較はできないと断った上でこう話す。片山アナリストはユーザー企業が自らシステム開発に取り組む姿勢を評価するとした一方で、内製化する理由を聞いたアンケート結果については「正直驚いた」(片山アナリスト)と口にする。

 同調査は自社の方針を内製化と答えた回答者に、その理由についても聞いている。最も多かったのが「開発コストの削減(SIに支払うコストが高額なためなど)」(55.2%)だった。
「これは社員ならタダという考えによるもので、この意識は今すぐ変えないといけない」と片山アナリスト。「ITをコストと捉えると、エンジニアをいかに安く雇えるかと考える。その考えでは最初の採用段階でつまずく」(片山アナリスト)。

 内製先進企業は異口同音に、内製化メリットとしてビジネス変化への対応力やアジリティー(機敏さ)の向上を挙げる。アンケートでは開発コストの削減に次いで、「開発、実装、保守対応の迅速化(SI企業とのやりとりの時間が長いなど)」(49.7%)が内製化の理由に挙げられたものの、「ビジネス変化への柔軟な対応」は27.6%で7番目の理由にとどまった。

 「企業は本当に内製化を成功させたいなら、エンジニアを重視する『エンジニアファースト』の姿勢を持ち、多少人件費が高くなってもいいと考える必要がある。そうでないとエンジニアを社内で抱えられず、継続的に開発を続ける内製化などできない」(片山アナリスト)。

 内製化によってIT部隊の生産性が上がり、結果的にコストが安くなることはあり得る。ただ、「主目的をコスト削減にしてしまっては、内製化は厳しいのではないか」(同)。