シリア、「宿敵」に支援要請か イスラエル発表、アサド政権は否定―トルコ地震
2023年02月07日20時30分

 【カイロ時事】イスラエルのネタニヤフ首相が、トルコ大地震で被災したシリアに対する人道支援の要請を受けたと明らかにした。だが、イスラエルの宿敵であるシリア政府寄りのメディアは「プロパガンダだ」と強く否定。外交関係のない両国間での支援実現は見通せず、政治対立で被災者が置き去りにされる可能性がある。

 今回の地震ではシリアでも多くの人が命を落とし、倒壊した建物の下敷きになった人の救助活動が続いている。国営シリア・アラブ通信(SANA)によれば、アサド大統領は緊急の閣僚会議を開いて対応を協議。外務省は国連加盟国などに支援を求めた。

 そうした中、ネタニヤフ首相が「要請を受けた」として支援を表明。テントや毛布、医薬品を届けることで合意したほか、負傷者をイスラエルに受け入れる案もあると報じられた。

 ところが報道によると、シリア政府当局者は政権寄りの地元紙に対し、イスラエルに支援を求めた事実はないと否定。「何十年にもわたりシリア人を殺してきたイスラエルに、どうして支援を求められるのか」と猛反発した。

 イスラエルへの要請はロシア経由とされ、事実ならロシアを後ろ盾とするアサド政権によるものと考えられる。一方、シリアでは内戦状態が続き、反体制派支配地域も地震で大きな被害が出た。アサド政権による支援を見込めない反体制派が、イスラエルに接触した可能性も否定できない。

 国内外の勢力が複雑に絡み合うシリアでは、これまでも国際社会の支援が滞る危機があった。人命優先の災害対応が求められる場面で、対立を乗り越え協力できるかは不透明だ。

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