議会襲撃は対岸の火事か 「自分は普通の日本人」という認識のわな

新年早々にブラジルで発生した事件は世界に衝撃を与えた。ボルソナーロ前大統領の支持者数千人が、昨年行われた大統領選挙を「不正」と訴えて、大統領府や国会、最高裁判所を襲撃したのである。逮捕者は1500人以上にのぼった。目下は前大統領がどの程度かかわっていたのかに関心が寄せられている。

注目すべきは、この出来事が米国の連邦議会議事堂襲撃事件のまさに“再演”だった点だ。よく知られるように、トランプ前米大統領の支持者たちは、2020年に実施された大統領選での敗北を「不正」だとして、翌21年1月6日に大挙して連邦議会議事堂に押し寄せた。その一部が議事堂内に侵入し、死者も出る騒乱となった。今回のブラジルの事件のニュースに接して、2年前のこの米国の出来事を想起した人も多かったであろう。

読売新聞は1月11日付の記事で二つの事件を比較、陰謀論がネットを通じて拡散したという共通点を指摘する。

米国の事件では「Qアノン」の影響が注目されてきた。米国は闇の勢力によって支配されており、トランプがそれを打倒する救世主である、という陰謀論の信奉者たちのことである。この陰謀論は米国のネット掲示板「4chan」に出自を持ち、ツイッターなどのソーシャルメディアを介して拡散していったと考えられている。同様のネットを舞台とした陰謀論の生成・拡散がブラジルの事件の背景にもあるのではないか、というわけである。

陰謀論は米国やブラジルにとどまらない。例えばドイツで昨年12月に連邦議会の襲撃などを計画した容疑で逮捕された集団もまた、闇の勢力にドイツが支配されているという陰謀論の信奉者たちであった。ネット上での陰謀論の拡散が民主主義社会を揺るがすような事件が頻発し、20年代の政治的潮流の一つを形作っている。

https://www.asahi.com/sp/articles/ASR286H4WR26UPQJ00P.html?iref=sp_new_news_list_n