広島県の9207人の純減を筆頭に、36道府県が「転出数>転入数」となる社会減の状況となった。移動による人口純減となったエリアのうち30エリアで男性よりも女性の方が多く転出超過となり、平均で男性の1.3倍の女性がエリアから消えゆく結果となった。社会減エリアの8割超において、男性よりも女性の移動によるエリアからの人口減少問題がより深刻であることが示された。

またエリア格差が著しく、北海道は男性が-123人に対し、女性が-3353人となり、格差は27.3倍である。この大きな格差は北海道の「通常モード」であり、北海道の人口の社会減は「女性問題でしかない」といっていいだろう。

ところが、残念なことにこの事実に直面した地元の政策立案に携わる関係者からは「そこまで酷いという実感がなかった。衝撃だ」という声を伺っている。地方創生に関して、なぜか男性の移動が女性よりも課題ととらえるアンコンシャス・バイアスが大きな影を落としている様子がうかがえる。

北海道に続いて10倍を超える男女格差を見せる大分県、女性のみ転出超過のため社会減エリアとなっている群馬県、熊本県、栃木県などは、「人口減少対策を100%女性に振り切る」くらいの覚悟がないと、統計的にはエリアの人口減問題は解決しない、と断言してもいいだろう。筆者の前稿とも繰り返しになるが、出生数の増減と女性の社会増減は強い正の相関関係にあり、もはや都道府県間の合計特殊出生率の高低(地元女性の出生力)では、出生数の増減レベルの比較はできない状況にあることを強く確認しておきたい*1。https://news.yahoo.co.jp/articles/6b0ed22cb83db8db5760dd661e91ea3d6ecbf17e

東京都への女性集中、コロナ禍で加速へ
【図表2】

2021年は社会増エリア首位の座を神奈川県に譲り、女性の社会増だけ(男性は社会減)で6位を保っていた東京都も、2022年は再び人流制限が緩和されたことから、一気に首位に返り咲き、転入超過総数で2位となる神奈川県の1.4倍の社会増となった。

ここで特に注目すべき点は、男女ともに1万人を超える全国トップの増加数であるばかりでなく、女性の転入超過数が男性の1.6倍となるなど、コロナ禍前(2019年以前)を更に上回る男女の集中バランス格差を見せていることである。増加11エリア合計に対して、東京都の増加が占める割合は総数ベースで33%、男女別では男性の30%、女性の36%を占める結果となっている。

実に、地方から消えた(転出超過した)若い男性のうち10人に3人、若い女性の3人に1人以上が東京都へ住み替えたことになる。
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そして、その周りの通勤圏も含めた1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉=東京圏)で見るならば、男女ともに地方から消えた10人中9人が東京圏へと住み替えた。若い女性が激増すれば、当然、東京都の未婚女性割合は高まるので、合計特殊出生率*2は低下する。しかし、若い女性が増え続けているので、婚姻数も出生数も地方よりもはるかに減少度合いは低く、全国で最も高水準の出生数を維持し続けることから、東京都は出生数の減少率が最も低い「非少子化エリア・ナンバー1」なのである。