「中国との外交は、将棋と同じです。相手に金の駒を取られそうになったら、飛車や角を奪う一手を打たないといけない」

 「安倍外交」は、視野の広い国際戦略を打ち出したことも特徴の一つだ。安倍氏が16年に提唱した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)は、海洋進出を強める中国への対抗を念頭に置いた構想として、米欧やインドなど各国で定着している。

 この構想は、第1次内閣の07年8月、インドで日印の結束を訴えた「二つの海の交わり」という演説が原点だ。スピーチライターを務めた谷口智彦・元内閣官房参与は「中国の巨大な大陸に対し、海のつながりが対抗軸になる」と解説する。

 安倍氏は各国の首脳と会談した際、中国の話題を必ず出して、軍備増強や強引な海洋進出を警戒すべきだと説いた。中国側に伝わることも見越した発言だったという。その真意を「中国は、勝負を仕掛けるとこちらの力を一定程度認める。厄介な安倍政権は長く続くぞ、と思わせる神経戦を繰り広げてきた」と説明する。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230213-OYT1T50213/2/