年間収入100万円…赤字ローカル線の運命やいかに JR久留里線沿線で実態調査
JR東日本が7月、公表した地方鉄道の赤字路線。県内は内・外房線の一部や久留里線などが含まれた。中でも、衝撃的だったのは久留里線の久留里-上総亀山間。2020年度の年間収入はわずか100万円だったという。双方向型調査企画「ちば特(千葉日報特報部)」、今回は鉄道ファンの声にもおこたえし、存続が危ぶまれる千葉のローカル線・久留里線の上総亀山駅(君津市)で乗降客を調査。沿線住民の声などを聞いた。
8月中旬、まずは上総亀山駅前で定点観測。同駅発の列車は1日9本。朝は4本があるものの、午前中の8時48分発木更津行きの後は午後2時26分発木更津行きまで、6時間近く列車は来ない。
その次も、午後5時15分発の久留里行き(久留里で木更津行きに接続)まで3時間近く空く。以降は午後6、7、9時台に1本ずつあるのみ。ほとんど地元の通学通勤輸送に特化したダイヤとなっていて地元住民以外が利用するには使いにくい。到着する列車は8本。そのまま久留里方面に折り返す便が多いため、朝夜以外はほぼ同じ間隔だ。
鉄道ファンばかり?
午後2時過ぎ、観光客が乗っている可能性のある、この日3本目の列車が上総亀山駅ホームに入ってきた。下車したのは15人ほどだろうか。東京から訪れたという60代の男性に駅舎を出たところで話を聞くと、「(赤字を)報道で知り、青春18きっぷのシーズンなので初めてきた。東京近郊なのにトンネルや田園風景があって雰囲気がいい」。熱心な鉄道ファンのようだ。
ただ、話し終えると足早に再び駅へ。「亀山湖にも足を延ばしたいが、次の列車が3時間後なので、ちょっと無理」と苦笑い。そのまま乗ってきた折り返しの便に乗り込んだ。
下車した人のほとんどは、いわゆる鉄道旅を楽しむ“乗りつぶし”が目的。列車と駅をカメラに収めると、先ほどの男性と同様、車両内へ。
次の5時台の列車からは7人が下車。やはり駅舎から出てきた人に話を聞くと、同じような目的の人ばかり。いずれも駅周辺から来て乗車したり、地元住民らしい人はほぼ見当たらなかった。
◆かつては行列
沿線住民の受け止めを聞いた。上総亀山駅近くで長年、商店を営んでいる80代男性は「かつては亀山湖方面へのレジャー客で駅からは行列ができるほどにぎわったが、今は見る影もない」と寂しげ。
一方で「いまはバスの方が便利。アクアライン経由で東京まで快適に行ける。高齢者には君津市のデマンドタクシーもあり、重宝されている」と現状を冷静に分析した。
久留里線の主な利用客である高校生についても「県立高校の生徒しか使わない。私学は通学用のスクールバスを運行するようになったから」と嘆く。
実際、千葉銀行久留里支店に近い駅前バス停には、鴨川と千葉、東京を結ぶ高速バスが停車。本数も多く、乗り換えの手間もない。デマンドタクシーも、利用者登録を済ませ、予約をすれば自宅から病院や郵便局といった目的地まで直接向かうことができる。どちらも鉄道にはないメリットだ。少子化、地域の過疎化もあり、地元の利用を劇的に伸ばすのは難しそうだ。
◆イベントで活性化を
ただ、沿線には亀山湖をはじめ名水や歴史を生かした観光施設がある。先の60代男性も「久留里は水がおいしくて地酒の種類が豊富。また来たい」と満足げだ。
沿線自治体も活性化に力を入れている。君津市をはじめとした沿線自治体や県などがJR久留里線活性化協議会(略称・クルカッキョウ)を20年に設立。木更津駅などで久留里線の広報活動を行っている。
JR東の公表について君津市の担当者は「驚いている」と衝撃を隠せない。現在、協議会では利用促進のため、千葉の魅力をSNSなどに投稿して魅力を発信する「あなたのLOVE CHIBA教えてキャンペーン」とコラボしたインスタグラムのイベントを展開中。オリジナルグッズや沿線の特産品が当たるキャンペーンを実施している。
存続が懸念される中、担当者は「今後も新酒や紅葉に時期に独自のイベントを検討」とあくまで意欲的だ。県内には他にもいすみ鉄道、銚子電鉄など逆風の中、奮闘する県内ローカル線がある。一鉄道ファンとしても久留里線の行く先から目が離せない。
https://www.chibanippo.co.jp/news/local/977534
鉄ヲタには人気なんだよな