https://news.yahoo.co.jp/articles/b4e4ea3450361ec4d24955fe7901fed9fe4d353e
美術館用の「音が響きにくい靴」が、予想外の用途で好評「今までの靴で一番かも」
「ミュージアム鑑賞のためのシューズ」という、ニッチな使い道のために開発されたレディースシューズが、ミュージアムとは全く関係のない職業の人々にぴったりだと話題になっています。
「フェリシモのW美術館に履いて行くための靴Wが、打楽器奏者のために作られたかのようにめちゃくちゃ良い」
こうツイートしたのは、新日本フィルハーモニー交響楽団の打楽器奏者腰野真那さんです。このツイートに、楽器奏者から「気になる」「かわいい」というコメントのほか、声の仕事をしている人や試験官バイトの人、生徒の発表会で舞台に上がる先生など、足音が気になる職業の人にもってこいだとコメントが寄せらました。
この靴は、通信販売会社「フェリシモ」の公式部活「ミュージアム部」から生まれた、「ミュージアム部美術館に履いていきたい 音が響きにくいエナメルTストラップシューズ」です。美術館に履いていくためのシューズをつくるというプロジェクトが始動してから約1年かけて、「足がらく」「音がしない」靴を開発したもので、2021年10月に発売されました。
「高さがある楽器に最高の3.5cmヒールだけど、幅が広いから安定するし、何よりも靴音が響かない! 全然響かない!疲れないしストラップ付で脱げにくい。6.270円。」と、打楽器奏者にとって良い理由を挙げていた腰野さんに、詳しいお話を聞きました。
この靴を知られたきっかけは?
フェリシモの靴を知ったのはTwitterのプロモーションでした。「書いてある通りならすごく良いけど…通販だしなぁ」と躊躇していましたが、ちょうど本番用に使っていた3センチヒールの靴がダメになりそうだったタイミングで購入してみました。
どれくらい履かれてツイートされたのですか?
1ヶ月ほど前に購入し、家での練習の他に本番で7回ほど履きました。最初からピタッとなんのストレスも無く履けた靴は初めてだったので、感動してツイートしました。
入退場のときによいのかと思ったのですが、靴音が気になるのは演奏しているときなのですね。
入退場ではみんな歩いていますし、拍手の音で消されたりするで、靴音は案外気になりません。弦楽器や管楽器の奏者は座って演奏するので、ピンヒールの人も多いです。
打楽器は立って演奏する楽器が多いですし、大きな楽器ですと幅が2メートルほどあるので、同じ位置に立ったままでは演奏出来ず、足を動かさなければなりません。また、曲の中でも複数の楽器を担当するので、楽器から楽器への移動もあります。
そしてステージはよく響くヒノキなどの木材が使われています。ステージ後方の奏者達は数段高い所で演奏するために山台(やまだい)の上にあがるのですが、山台は中が空洞なので、足音が余計に響きやすいんです。
なるほど、靴音が響いてしまう要素がいろいろあるのですね。ちなみに、高さのある打楽器はどんなものがあるのですか?
木琴の仲間のシロフォン、マリンバ、鉄琴の仲間のグロッケンシュピールやヴィブラフォン、のど自慢でも使われるチャイムなど、中には高さが調節出来るものもありますが、出来ないものも多いです。欧米のメーカーのものは特に、私のような小柄な人間にとっては高く感じます。
最高の靴が見つかりましたが、もし要望を聞いてもらえるなら、ほかにどんなことをお願いしたいですか?
今回のツイートがきっかけで、いろんな方とたくさんの靴談義をすることが出来ました。そんな中で、「男性用も欲しい」「モデルサイズ(26センチ以上)も欲しい」という声はとても多く聞きました。
私個人としては、その時演奏する楽器によって靴を使い分けているので、ヒールが3段階くらい選べると嬉しいです。また、足を楽器本体やスタンドに密着させて演奏することもあるので、エナメル素材だとキュッと音が鳴ってしまうため、サラサラした素材のものもあったら嬉しいですね。
靴選びの難しさが伝わります。ツイートが2.6万の「いいね」がついて話題になりました。
自分が気に入った靴をツイートしただけでしたが、広がるにつれて色々な意見を見聞きしました。職業と靴に関しては、KuToo運動だったり、さまざまな議論があるんだと改めて考えるきっかけになりました。職種や性別によって、靴を制限されることが、どこまでが良くてどこまでがだめなのか、答えはそれぞれにあると思います。ですが、私にとってフェリシモのこの靴は、制限を制限と感じず、自分が心地良くいられて、その上おしゃれを楽しむことも出来る、そんな一つの答えとなりました。
このツイートが広がって、誰かがこの靴に出会ったことで、その人の仕事が少しでも心地よくなったならとても嬉しいです。