北朝鮮で栄誉軍人と呼ばれる傷痍軍人。軍勤務中の事故などで負傷し、障害を負った人のことを指すが、専用の職場に配属され、様々な福祉の恩恵を受けられるなど、非常に優遇されていた。
しかし、それは昔の話。福祉システムが崩壊してしまった今では、健常者同様に商売をして収入を得ることで生きながらえている。ところが、コロナ禍で市場の営業が制限されるなどして、それすらも難しくなった。そして、彼らは集団行動に乗り出した。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
事が起きたのは今月初めのこと。朝鮮労働党安州(アンジュ)市委員会(市党)の信訴課に、栄誉軍人たちが詰めかけ、こう訴えた。
「今にも餓死しそうだ。生きていけるように食糧をくれ」
コロナ前には、グループを組み、商品を他地方へ運ぶ「タルリギ」という商売を営んでいた彼ら。北朝鮮では良い暮らしができる層に属していたようだ。ところが、極端なゼロコロナ政策で国境が封鎖され、商品が中国から入ってこなくなった。商品をかき集めたとしても、厳しい移動制限で輸送そのものができなくなってしまった。
貯金が底をつき、家を売って得たカネでなんとか生きてきたものの、それさえもなくなくなり、市党に押しかけたという次第だ。北朝鮮において、権力に物申すことは文字通り「命がけ」の行動と言える。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kohyoungki/20230220-00337954