数万円払ってでも撮りたい 鉄道会社の有料撮影会、「撮り鉄」大満足
列車の撮影が趣味の鉄道愛好家「撮り鉄」をターゲットにした有料の撮影会が活況を呈している。参加費が１回数千円から数万円を超えるものも珍しくないが、販売開始直後に売り切れることも多いという。撮り鉄が集まる撮影会に参加した。
カシャッ、カシャッ――。２０２２年１１月中旬の日曜日、雨上がりの工場の一角に、乾いたシャッター音が鳴り響いた。集まった二十数人の男女が構えるカメラやスマートフォンの先に並ぶのは「国鉄カラー」と呼ばれるクリーム色と「ぶどう色」に塗装された往年の電車や現役車両の数々。参加者は線路のそばから納得の１枚が撮れるまで黙々とシャッターを切り続けた。
この日開かれたのは、吹田市にあるＪＲ西日本最大級の車両基地・工場「吹田総合車両所」の見学ツアー。普段は関係者以外立ち入り禁止の工場内を巡る企画で、改造工事や検査中の車両を撮影できる。参加者で京都府長岡京市の会社員、大藪崇史さん（２５）は「引退した車両を撮影できる機会は貴重」と満足げに話した。
ツアーはＪＲ西の企画で２２年５月から２３年１月までに延べ１０００人近くが参加した。料金は大人１人あたり１万２８００円と安くないが、１１月は１００人の参加枠が約５分で完売。ＪＲ西の担当者は「鉄道ファンの需要の高さを改めて実感した」と手応えを語った。
一方、撮り鉄を巡っては安全運行に支障をきたしかねない迷惑行為が度々クローズアップされてきた。
「一部の迷惑行為が目立っているが、静かに撮影を楽しむのが本来の撮り鉄の姿だと思う」。ツアー参加者で団体職員の竹上潤司さん（５２）＝京都市伏見区＝はそう話す。「殺伐とした現場の雰囲気が苦手になった私のような撮り鉄にとっては、有料でも落ち着いて車両を撮ることができる撮影会は本当にありがたい」と語った。
有料イベントを企画しているのはＪＲ西だけではない。ＪＲ東日本は２１年度、数千円から数万円で約２３０回のイベントを実施し、延べ約４８００人を動員した。能勢電鉄（兵庫県）は２２年１２月下旬に車両撮影や車庫内の見学、運転体験をセットにした１組８万円のイベント（限定６組）を販売したところ、数日で完売したという。
鉄道ライターの伊原薫さん（４５）は「有料撮影会の広がりには、新型コロナ禍で多くの鉄道イベントが中止されたことが影響している」と分析する。少人数の撮影会には、人や建物の影が映り込んでいない写真が撮りやすい利点もあるといい「鉄道会社が有料の撮影会を開催する流れは今後も続くのではないか」と話した。
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