
ウクライナ未訪問のG7首脳は岸田首相一人に
2023/2/21 19:27
バイデン米大統領がウクライナの首都キーウを電撃的に訪問し、ロシアによる侵略開始後に首脳がウクライナ入りしていない先進7カ国(G7)は日本だけとなった。日本は今年のG7議長国で、本来はウクライナに対するG7の連帯を主導すべき立場だ。首相は訪問に意欲を持っているが、他国に比べて現地での安全確保などの面でハードルが高く、未だ踏み切れていない。
首相は21日、官邸で公明党の山口那津男代表と昼食を取りながら「ウクライナ側から(訪問の)招待を受けているが、いろいろな観点から考えたい」との認識を伝えた。
5月に広島市で開くG7首脳会議(広島サミット)は首相が議長を務め、対露制裁とウクライナ支援の強化が主要テーマになる。首相のウクライナ訪問について、松野博一官房長官は21日の記者会見で「現地の安全対策など諸般の情勢を踏まえて検討しているが、現時点では何も決まっていない」との説明にとどめた。
最大のハードルは、激しい戦闘が続く現地での首相の安全確保だ。他のG7首脳の訪問時は、軍隊や特殊機関が安全確保のため情報収集や警護にあたったとされる。だが、日本では自衛隊を現地に派遣し、首相を警護させる法的根拠がないという。日本は北大西洋条約機構(NATO)加盟国ではなく、情報収集でも劣る。外務省幹部は「米国は能力が違う」と認める。
秘密保持の難しさもハードルだ。バイデン氏は空軍機で秘密裏に米国を離れた。日本では首相が国会開会中に海外出張する際、衆参両院に事前に通知する必要があり、極秘訪問は事実上不可能といえる。
ただ、他のG7首脳もリスクを負っており、岸田首相の訪問の可否は「最終的には首相の決断次第」(政府高官)だ。(田中一世)
https://www.sankei.com/article/20230221-3SMNLOKQ2FLGRGRIKPXAOCJM4Y/