平静装い生きてきた 幼少期の性被害、告白は40歳過ぎてから
一番近しい人に心を壊された。始まりは4歳のころ。空さん(仮名)は、一緒に風呂に入っていた父にゴツゴツした指で下半身を触られた。「痛い」と訴えたが、行為はやまなかった。父の上に座らされた。
一緒に入浴しなくなって、嫌な思いをすることはなくなった。でも、それはほんの一時期だけ。小学校の高学年になると、また、あの手が襲ってきた。
2Kのアパート暮らし。親子3人、川の字で寝ていた。隣にいた母は父の行為に気付いていたはずだ。でも、何も言わなかった。母に重度の障害があったことが関係していたのかもしれない。
中学生になったある日、父は「気持ちが悪くなっていないか」と体調を尋ねてきた。それ以来、行為はやんだ。初潮を迎える前だった。妊娠を警戒したのではないか。質問の意味に気付いたのは、ずっと後だ。
自身を「汚れた存在」だと思った。人と話すとき、どんな表情をしていいか分からない。「気持ち悪い」と言われ、いじめられた。「この世から消えてしまいたい」。何度も願った。それでも進学し、就職もして、がむしゃらに意識的に「普通の生活」を送った。
精神障害者手帳の取得で「許された」
成人後は父を避け、親族から「なぜ親を大切にしないのか」と責められた。何度か精神科を受診した。でも、壊れた心の奥に触れられることはなかった。悪夢のような体験を伝えることもできず、「うつ病」と診断されただけだった。
https://mainichi.jp/articles/20230222/k00/00m/040/384000c