人気漫画キャラに変化の兆し、“天才”は不在? 「“努力する”という才能を持っている」キャラ人気の傾向

 フィクションが描かれる漫画の世界だが、そこで生きるキャラクターには時代が反映されるもの。
登場人物に対する読者の共感ポイントも、時代とともに変化しているようだ。
かつて人気の漫画キャラといえば、ずば抜けた能力を持つ天才的な主人公が、その才能を開花させながら活躍していくイメージだったはず。
しかし近年の読者が支持するキャラに、“天才”は不在。夢を掴むことを信じ、地道な努力を積み重ねる主人公の泥臭い姿に、より支持が集まっているようだ。
「超人」より「リアルな人間性」を求める読者の心理とは。


 『ブルーロック』に登場人物するキーマンは、日本代表がW杯で優勝するために必要なのは、
協調性でもチームの絆でもなく、「強烈なエゴ」と「圧倒的な個性」を持つ革命的なストライカーであると分析する。
そこで、日本フットボール連合が立ち上げたプロジェクト「ブルーロック(青い監獄)」を計画。
そこに集められた主人公・潔世一たち300人の高校生が、己を“エゴイスト”に変える蹴落とし合いの選別に挑んでいく。
「サッカー×デスゲーム」を組み合わせた奇抜な物語だが、自己主張と個性は厳しい現実社会においても重要な要素。読者が共感できる要素は満載だ。

 「自分にも取り入れられそうなマインドや姿勢を、『漫画のキャラクターから学んだ』という読者はとても多いです。
以前のスポコン漫画といえば、主人公にもともとの才能や血筋があったり、ある日突然に才能が開花したりして活躍する物語が多かったように思います。
それが今の時代では、超人級のキャラクターというよりも、リアルな人間性を持ったキャラクターに支持が集まっているようです。
自分を信じるためにどう努力するかという姿が描かれていて、主人公は“努力する”という才能を持っているんです」
(『マガデミー賞2022』審査員/ブックライブ書店員「すず木さん」、以下同)

 主演男優賞にノミネートされた『ブルーロック』の主人公・潔世一は、まさに努力の天才だ。

 「彼は、他人と競うより“自分は自分”という考えを持っています。
自分の持つ武器や才能は何か、持っているものをどう生かすかを追求します。
敵は自分の中にあり、自分の弱さと戦うという考え方は、読者が活用できる要素も多そうです」

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