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スネオヘアーさん腕振るう料理店、なぜ水上温泉(群馬)に 本気のカレーで街に活気 「料理に救われた」

水上温泉街の細い路地裏にたたずむ料理店「blue」(群馬県みなかみ町湯原)。昨年7月開店のこの店で、カウンターに立ち、腕を振るうのは、ミュージシャンのスネオヘアーさんだ。本業の音楽活動と並行し、「本気の趣味」として振る舞う料理は本格派。ファンのみならず、地元住民の胃袋もつかみ、地域に活気をもたらしている。

 昼はチキンや豆など数種類のカレーやパスタ、夜は酒やつまみを出す。店を訪れる緊張しがちなファンや地元客に対し、「気さくにやります」と話す。カウンター越しに交流を楽しんでいる。

 スネオヘアーさんは、「ワルツ」や「逆様ブリッジ」など数々のヒットソングを放ち、昨年活動20周年を迎えた。みなかみ町で飲食店を始めたのはなぜか。

 登山を愛好するスネオヘアーさんは町北部にそびえる谷川岳に引かれ、2017年から同町と東京の2拠点生活を送る。19年、所属事務所からの独立直後、コロナ禍に。「ずっこけました」。ライブの中止が相次ぎ、当初は気持ちが音楽に向かなかったという。

 一方、自宅で昼食を作り、料理の写真を交流サイト(SNS)に投稿し始めた。「作ることで救われていたみたいで。ゼロから作り、味付けも自分で決めて、というのが必要だったんですね」

 以前から純喫茶の料理や空間が好きだったという。自身の手料理も食べてもらいたいと思っていた頃、空き物件の話を聞き、開店を決意した。かつての活気を失った温泉街に、店の明かりを増やしたいという願いもあった。「非力ですけど、自分きっかけで、この町に足を運ぶ人が増えるといいなと思っています」

 異業種に見える料理と音楽は「一緒」という。向上への欲望や表現手段は無限でも「お客さんに出すものを『よし、これで』と決めるのは自分」。生きる上で欠かせないという点でも似ており「両方とも、営みのようなもの」だという。

 音楽活動はコロナ禍以降、町内の自宅を拠点に80回ほど生配信している。ライブ活動も徐々に復活し、店との両立は容易ではない。それでも、しばらくは音楽と店を「行ったり来たりしたい」と願っている。

 みなかみ町について「なぜか『終わっている』という認識の人が地元に多く、もったいない。自然も寂れているところも魅力で、普通に見える景色が新鮮」と魅力を語る。店やライブ配信を通し「このローカルも発信したい」と意気込んでいる。

 店は音楽活動の日程に合わせ、不定営業。自身のホームページなどで、開店日情報を更新している。