ワンクリックで解雇なんて…Google日本法人で初の労組が結成 巨大IT企業で続々起きる新たな波
巨大IT企業Google(グーグル)の日本法人で働く従業員らが、同法人では初めての労働組合を結成した。グーグルは昨年約8兆円の利益を上げ業績好調なはずだが今年1月、全世界で1万2000人を解雇すると発表。労組結成はこれに不安をおぼえ、抗議するためだ。グーグルに限らず、アマゾンやツイッターなど米国発の世界的IT企業で一方的な解雇が横行しているが、ボタン一つで従業員を消去するかのような手法には批判が集まっている。(木原育子、山田祐一郎)
◆解雇への不安が組合加入に走らせる
「説明会をやればやるほど組合員が増えている。みなが解雇におびえている。この加速度が不安の裏返しと言える」。東京管理職ユニオンの神部紅あかいさん(41)は、グーグル日本法人の労組の現状をこう語る。
グーグル社は1月20日、全世界の従業員の6%に相当する1万2000人の解雇を発表した。スンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)の名で全従業員に電子メールが送られ、解雇の対象は「世界のあらゆる地域、全部門に及ぶ」と説明。2月に入ると、今度はグーグル日本法人代表の奥山真司氏から、「3月中に何らかのアクションが起きる」とのメッセージが送られた。
「解雇なのか、ただの事業編成なのか。解雇としたら、対象者は誰なのかなど、一切触れられていない。あまりに一方的なやり方だ」と神部さんが従業員の思いを代弁する。
東京管理職ユニオンはこれらのメールが送られた2月以降、グーグル日本法人で働く数十人を組織し、支部を結成。グーグル日本法人で労働組合が結成されるのは初で、組合員は50人を超える見込みという。
◆まさかこんな軽い感じで解雇なんて…
いち早く参加を表明したグーグル日本法人のエンジニアの男性(36)は吐露する。「裏切られたような思いだ。もし解雇されたらと考え始めると、気持ちもすさむし、どんどん暗くなる」
CEOからのメールは当初、気に留めていなかった。「新製品の発表や組織改編でもあるのかな」。だが翌日のニュースで、米国では、メールの翌日から社内のネットワークに入るアカウントが失効したり、さよならも言えずに解雇されている現状を知った。「あわててメールをしっかり読んだ。まさかこんな軽い感じで、重要な解雇の話が通達されるなんて…」と驚く。
大学院を出た後の2012年、社内の自由さや待遇、裁量の大きさに感銘を受け入社した。22年には600億ドル(約8兆円)の利益を上げ、1140億ドル(約15兆円)の流動資産を保有する世界をリードする企業で、メールや会議など基本は英語。社員は多国籍で、自由闊達かったつな企業風土があった。「やりがいのある職場だった」
だが、解雇方針の発表後は、仕事が手についていない同僚も多い。男性は独身だが、扶養家族がいたり就労ビザで入国している外国籍の同僚の動揺は、より激しいという。
グーグルはこれまで、社の行動規範に「Don't be evil(邪悪になるな)」や、「Do the right thing(正しいことをしよう)」と掲げてきた。男性は、「誰が解雇の対象になるのかも分からず、情報がなさ過ぎる。グーグルのやり方は、かつて掲げた行動規範からはかけ離れている」と語る。
神部さんもグーグルだけの話ではないと見ている。「グーグルで違法な解雇を許せば、他の企業にも悪い意味での影響をもたらす。私たちが立ち上がるのはグーグル従業員のためと同時に、日本の全ての労働者の利益のためでもある。連帯していきたい」と訴える。
◆Amazonも、ツイッターも、Facebookも
巨大IT企業をめぐる労働者との紛争は他にもある。アマゾンでは2015年に日本法人の労組を結成。同法人では退職に至る前に、個人の業績改善を目的とする「コーチングプラン」などを課し、達成できなければ解雇する方法だったが、その基準が曖昧なため、労組は会社側と折衝を重ねてきた。
アマゾン日本支部の組合員は「日本企業と違って、会社側は解雇対象の基準や情報を全く明かさなかった。情報を出さないという点ではグーグルのやり方との共通点を感じる」と話す。
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