子どもや高齢の犠牲者の姿を見て…”元ヤクザの日本人義勇兵”が語る「ウクライナで戦う理由」
突然の侵攻から1年 激動のウクライナ

2023年02月26日

「報道を見ていて、最初は戦争が始まったなというぐらいにしか思っていませんでした。しかし、ロシア軍が民間人に危害を加えていることに気持ちが動かされた。とくにお年寄りや子供の犠牲者を見ていて『このまま傍観しているだけで良いのか?』という気持ちになってきて……」

そう語るのはウクライナで義勇兵として活動するハルさん(49、仮名)。彼のこれまでの人生は波乱に満ちている。

「父親が暴力団の組長をやっていて、刑務所に入ったり出たりしていました。そのこともあり、周囲からイジメというか差別を受けていました。僕も寂しかったから同じような境遇の子たちと遊ぶようになり、流れるままに極道の道に進んでしまいました」

父親を超えたいという思いで同じ極道の道へと進んだハルさん。だが組に入ってからは苦労が続いたという。

「良い組に入ればそれなりのポジションにつけたのですが、僕は運が悪いのか組長の用心棒などをしていました。仕事柄、命に関わる出来事もありましたが、戦場に比べたらたいしたことはないです。ただ、シノギがないのでいつもカネには困っていましたよ」

ハルさんは某宗教団体とそこに関係のある団体に暴力的な抗議をしたことで罪に問われ、西日本にある刑務所で10年間服役した。

出所後は今までの生き方を悔い改めて四国で林業に従事したが、2年目で無理がたたって膝の半月板を損傷。職探しをしている時にロシア軍のウクライナ侵攻のニュースを見て衝撃を受ける。ゼレンスキー大統領が世界に向けて義勇兵の呼びかけをしているのを聞いた彼は、これまでの人生について振り返り、このまま見て見ぬ振りをしたら死ぬ間際に後悔するのではないかと思ったという。

「これまで犯してきた罪の贖罪の意味もあって、やらないで後悔するよりはまずは行動しようと思いました」

彼自身がカトリックのクリスチャンだったことも理由のひとつだったのだろう。生まれて初めてパスポートを取得し、昨年3月29日に日本を出国。これが人生初の海外だったというから驚きだ。
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