CRISPRはまた、水産養殖や農業を変革する可能性もある。先日、ナマズにワニの遺伝子を組み込んだ研究者に関する記事を発表した。この遺伝子編集の狙いは、ナマズをワニらしくすることではなく、病気への抵抗力を高めることだ。ワニには、感染症を撃退する特殊な能力があることが判明したのだ。
回復力がほんの少しでも上がれば、魚の養殖に大きな影響を与える可能性がある。現状では、世界中で養殖されている魚の約40%が水揚げ前に死んでいる。その損失を一部でも防ぐことができると想像してみてほしい。
科学者が家畜のゲノムに手を加えようとしたのは、今回が初めてではない。畜産農家はもちろん、選択交配によって家畜を大きく、筋肉質で、従順で、何世代にもわたって飼育しやすいものにしようと試みてきた。しかし、CRISPRのような遺伝子編集ツールを使えば、そのプロセスを早めることができるだろう。
CRISPRは、それ以前の遺伝子編集ツールよりも大幅に優れている。まず、比較的安価で、すぐに簡単に使える。さらにCRISPRの新しい編集方法では、科学者は遺伝子に対してより多くのことができるようになった。例えば、DNAの塩基配列のC(シトシン:Cytosine)をT(チミン:Thymine)に置き換えるなどの塩基置換を可能にする方法もあれば、まったく新しい遺伝子を挿入できる方法もある。
したがって、科学者が家畜を対象にCRISPR実験を始めたことは、驚くことではないだろう。遺伝子編集でよく選ばれる標的の1つは、筋肉の成長を制御するタンパク質をコードする遺伝子「ミオスタチン(Myostatin)」だ。ミオスタチンの働きを妨げると、筋肉量がどんどん増える。つまり、大きくて筋肉質な動物が手に入るということだ。したがって、より多くの食肉を得られる。
https://www.technologyreview.jp/s/299057/how-crispr-is-making-farmed-animals-bigger-stronger-and-healthier/