腐海(ふかい)は、ウクライナ本土とクリミア半島の間に横たわる、アゾフ海の西岸に広がる干潟である。腐海は、この地のほとりに居住している3民族でそれぞれ別の呼び方がなされている。当地に先住しているクリミア・タタール人からは「泥」、または「汚れ」を意味する言葉で「スヴァシュ」クリミア・タタール語: Сываш( 「スィヴァーシュ」ウクライナ語: Сива́ш、「シヴァシュ、シヴァーシュ」ロシア語: Сиваш)、または、「腐海」、「腐った海」を意味する言葉で、クリミア・タタール語: Чюрюк Денъиз、(ウクライナ語: Гниле́ Мо́ре:、ロシア語: Гнилое Море)と呼ばれている。英語でもこの海をラテン表記して"Sivash"、あるいは意訳して"Rotten Sea"と呼んでいる。
腐海の水深はごく浅い。最も深い場所でも3.5メートルほどしかなく、0.5から1メートルの底に足がつく程度の場所がほとんどである。底質は分厚いシルトから成っている。厚さ5メートル以上で、所によっては10~15メートルも堆積している。とても浅いために、夏になると腐海の海水は強く熱せられて腐った強くて酷い悪臭を放つようになる。これが、各民族・各国語から「腐った海」・「腐海」を意味する名前で呼ばれる理由になっている。黒海沿岸でもあり、地中海性気候に覆われているために、夏には雨がほとんど降らず、高温で乾燥した気候である。それゆえ水の蒸発が激しく、そのために海水が濃縮されて塩分濃度が非常に高くなっている。腐海の塩分濃度は、北部で22パーミル、南部で87パーミルにもなる。海水塩の総量はおよそ2億トンと見積もられている。このため沿岸では、古来より製塩業が発達している。ここで生産される海塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウムの各塩化物はもとより、臭化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩類が多量に含まれている。現在では沿岸にはいくつかの化学プラントが建ちならび、腐海の濃い海水から得られる鉱物資源を精製・抽出している。生産されるミネラル資源を工業原料にして、ペレコープ臭素工場(ロシア語版)が臭素を抽出し、クリミア・タイタン(ロシア語版)が硫酸肥料を生産し、クリミアソーダ工場(ロシア語版)がソーダ灰と塩酸を生産しており、地元経済に大きな影響を与えている。
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