フランスでも、やはり出生率は低下の一途をたどっている。フランス国立統計経済研究所(INSEE)の発表によると、フランスで2022年に生まれた新生児は72万3000人で、2021年と比べて1万9000人減少している。2010年には2 .029だった合計特殊出生率は、2022年には1.80にまで落ち込んだ。フランスの新聞『フィガロ』紙によれば、これは「歴史的凋落」である(Le Figaro Edition numérique, de 18 janvier 2023)。
とはいえ、私の友人によれば「ほとんどの人は少子化なんて心配していない」そうだ。というのも、フランスでは移民が出生率を引き上げてくれるため、である。1999年から2019年の20年間に、両親ともフランス人から生まれた子どもの出生数は、15.65%ダウンしている。それに対して、同期間に、少なくとも片方の親が外国人の両親である子どもの出生数は61.3%アップ、両親とも外国人である子どもの出生数は49.8%アップしているのである。
この状況をめぐって、フランスの極右系の作家ルノー・カミュは、2010年「大規模入れ替え」(Grand Remplacement)が起こりつつある、という陰謀説を唱えた。つまり、フランスでは、フランス人たちが、アフリカ系およびアラブ系移民たちによって、すっかり代替されてしまうというのである。
「大規模入れ替え」論は、出生率や出生数に関する統計に科学的に基づいているものではなく、単なる人種差別的印象に基づいているとはいえ、フランスにおける外国人の親をもつ子どもの出生数の増加が、「フランス人純血主義」という幻想を死守したい極右政党の昨今の台頭をある点で動機づけていることは、少なくとも指摘できるだろう。
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