第677回:超省電力の新たな真空管「Nutube」の音はどう違う? 個人販売も計画中
https://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/756303.html
――まずはNutubeを開発したキッカケ、そしてなぜ楽器メーカーであるコルグが
真空管というデバイスまで開発することになったのか、といった辺りをお聞かせください。
森川:コルグは楽器メーカーではありますが、
これまで非常に数多くの真空管を使った製品を出してきました。
真空管が非常に好きなメーカーでもあり、真空管を使った製品の数という意味では
世界でも有数の企業だと思います。
ただ、ご存じの通り、真空管は現在非常に入手しづらいデバイスとなっています。
我々が今、真空管を使った製品を出すとしたら、それなりの数を入手する必要があり、
どこかで100個、200個の在庫を見つけてくるだけではダメなんです。
さらに切実な問題としてあるのが歩留まりです。
現在、流通している真空管は海外品が中心で、粗悪品も多く、製品化していった際に
不良品となってしまうリスクが高いのです。
日本国内のどこかに、真空管生産のための設備が残っているのではないかと
探し回ったこともあるのですが、もうすべて潰されてしまって、残っていなんです。
だったら我々が、というのが背景にあるのです。
――Nutubeは蛍光表示管技術を応用しているとのことですが、そもそも蛍光表示管とはどういうものなのですか?
森川:蛍光表示管は50年前、伊勢電子工業(現在のノリタケ伊勢電子)の中村正博士らによって
発明された日本独自の表示装置で、VFD、FDディスプレイなどと呼ばれることもあります。
当時、特許使用料料が非常に高かった液晶ディスプレイの
特許を避ける目的で発明されたデバイスであり、当時の電卓などに使用されていました。
文字を表示するのが得意であるため、現在でも電光掲示板や、
電車内でのニュース表示などのデジタルサイネージ、またクルマのメーターであったり、
一部のオーディオ機器の表示部など、さまざまな分野で幅広く活用されています。
水色に光る視認性の高いデバイスであるのが特徴となっています。
――その蛍光表示管と真空管がどのような関係になるのですか?
森川:そもそも蛍光表示管は、フィラメントとアノードグリッドを
真空状態におかれたガラスケース内に封入したものであるため、広義においては真空管なんです。
これをアンプ用のデバイスとして使えるのではないか、というアイディアは
当社の監査役である三枝文夫によるものなんです。
三枝が、かなり昔に蛍光表示管を使ったラジオを作ったことがあるという記憶を元に、
何年か前に、現在の蛍光表示管を使って実験を繰り返した結果、
音がある程度出るところまでは持ってくることができたのです。
その段階で、ノリタケ伊勢電子さんにお声がけをし、開発を持ちかけました。