ネズミもオオカミも操るネコの寄生虫 すでにヒトも3割感染の可能性

時に病気や不快な症状、最悪の場合は死をももたらす寄生虫。寄生した生物の生理や行動にも作用していることが最近の研究で解明されてきた。こうした寄生虫や「操られた」生物は、生態系に大きな影響を及ぼしていることも分かってきた。

2018年5月、長崎県沖で小型のイルカ、スナメリの死体が漁業用の網にかかった。死因はトキソプラズマの感染だった。

死因を調査した、帯広畜産大チームの西川義文教授にとっては、ある驚きがあった。

「頭で知っていたが、本当に海の生物も感染するんだと認識した」

トキソプラズマは寄生虫の一種。一生の様々な場面で動物に寄生する。卵を産むことができる「終宿主」は、ネコの仲間で陸の動物だ。ネコは、オーシストと呼ばれる殻に包まれたトキソプラズマの卵をフンとともに排泄(はいせつ)する。雨が降ると、オーシストが川に流れ、やがて海まで流される。貝の中にたまり、貝を食べた海の生物が感染する…。

西川さんの驚きは、自分が調べたスナメリが、まさに海の生物の感染だったからだ。

ネコ以外の鳥類や哺乳類は、トキソプラズマの「中間宿主」となる。ヒトも例外ではなく、すでに世界の3割が感染しているとの報告もある。ネコのフンの処理や感染した動物の生肉を食べることを通じて感染する。

https://www.asahi.com/sp/articles/ASR383J56R1CPLBJ002.html?iref=sp_new_news_list_n