カナダの水族館で、10年以上ひとりぼっちで過ごすシャチがいた。名前はキスカという。
本来なら仲間と社会生活を営むシャチが、たった1頭で水槽の中で過ごしているその寂しそうな姿は、「世界一孤独なシャチ」と世界的に報じられ、なんとか対策をとるべきという声が上がっていたのは前回お伝えしたとおりだ。
そのキスカが、3月9日に死亡したことが伝えられた。47歳だった。
世界一孤独なシャチ、キスカが死亡
法務次官省は、3月9日、カナダ・オンタリオ州ナイアガラにあるマリンランド水族館で40年以上飼育されていたシャチのキスカが死んだことを確認した。
死因は明らかにされていないが、マリンランド水族館の説明によると、キスカの健康状態は数週間にわたって低下していたという。
「昨日と今日の両日、動物福祉局が現地に赴き、解剖の必要性を含めた飼育基準の遵守状況を確認しました」同省の広報、ブレント・ロス氏は語った。解剖はマリンランドの専門家が行った。
同省は、まだ剖検が行われていることから、それ以上の情報を提供するのを拒んだ。
マリンランドの海洋哺乳類ケアチームと専門家は、「キスカが快適に過ごせるよう可能な限りのサポートを行いました。彼女の喪失を悼みます」と地元メディアに語った。
動物福祉法(AWS)活動の一環には、飼育基準がちゃんと満たされているかどうかを確認する査察業務がある。
ロス氏によると、2020年の1月以降、マリンランドにはこうした査察が160回も入っているという。
3月10日、動物保護団体アニマル・ジャスティスは、キスカの扱いについて、マリンランドを告発する声明を新たに発表した。
保護団体は、キスカの死について、心が押しつぶされそうだと言っている。
「連邦法改定により、キスカはカナダで飼育下におかれた最後のシャチだったということになります」野生動物キャンペーンのマネージャー、ミシェル・ハマーズは言う。
保護団体は、キスカの死に直面して、カナダでこれ以上、罪のない動物たちが死なないための努力がさらに倍増されることを期待している。その代表的な例が、カナダのジェーン・グドール法だ。
生涯のほとんどを水族館で暮らし、10年以上ひとりぼっちとなったキスカ
キスカは1979年、アイスランドの海域で3歳の時に捕獲され、映画『フリー・ウィリー』で有名になったケイコと一緒にマリンランド水族館にやってきた。
それ以降44年間を水族館の中で過ごし47歳でこの世を去った。一般的なシャチの平均寿命は50~ 90年だそうだ。
当初、キスカには仲間のシャチがいた。飼育下で5頭の子供も出産したが、子供は若くして死んでしまい、仲間も次々と旅立っていきひとりぼっちになった。
2011年以降は、仲間がまったくいない状態で暮らしていた。
孤独によるストレスのせいなのか、2021年、キスカが水槽のガラスに激しく体をぶつけたり、無気力に体を浮かべている姿が撮影された動画がネット上で話題となった。
2019年に法案S-203が可決されて、海洋哺乳類の繁殖や輸入・飼育が違法となった。それ以降、キスカはカナダ国内で飼育下にある最後のシャチとなった。
現在カナダでは合法的にシャチを飼育することはできない。
https://karapaia.com/archives/52320947.html
https://i.imgur.com/qoo3XJe.jpg