2020年に登場したSamsungの「Galaxy S20 Ultra 5G」をはじめとするSamsungのハイエンドスマートフォンでは、AI処理を施した最大100倍の「スペースズーム」を特徴のひとつとしています。しかし、Samsungのスペースズームで撮影した写真は「正確なものではない」とRedditユーザーのibreakphotosさんが指摘しています。
Redditユーザーのibreakphotosさんは、SamsungのAI処理を加えることで最大100倍ズームを実現する「スペースズーム」機能の信ぴょう性にかねがね疑問を抱いていたそうです。そこで、実際にスペースズームを利用して撮影できる写真を検証したところ、「スペースズームで撮影した写真は、完全な捏造というわけではないものの、本物というわけでもないことがわかりました」と説明しています。
アメリカのテクノロジー系YouTuberとして人気のMKBHD氏ですら、YouTubeショートでスペースズームで撮影したとされる写真が捏造されたものではないと主張しています。しかし、「これは正しくない」とibreakphotosさん。ただし、「Samsungのスペースズームで撮影した写真が、偽造されたものであると証明することができた人はいません」とも述べています。
複数のフレームを組み合わせて写真のディテールを精細に表現する超解像度処理と、さまざまな月の写真でトレーニングされた特定のAIモデルによるディテールの復元処理には明らかな違いがあると、ibreakphotosさんは指摘。ibreakphotosさんが行った実験が示しているように、復元するディテールが存在しないにもかかわらず、ディテールがより精細に表現されているため、Samsungのスペースズームは月の写真でトレーニングされたAIモデルが利用されている証拠であるというわけ。
そのため、ibreakphotosさんはSamsungのスペースズーム機能について、「マーケティング的に欺瞞であり、AIを用いて本来存在しないディテールを追加しています。メディアによるスペースズーム機能のレビュー記事では、マルチフレームやマルチ露光などについての言及がありますが、実際は光学系の処理はほとんどなくAIを用いたディテールの追加のみが行われているようです。光学系の処理では目に見えない細部まで復元することはできません。月は地球に潮汐ロックされているため、月の画像でAIモデルをトレーニングし、月のようなものが検出されたときだけテクスチャを貼りつけることで月の写真のディテールを精細にすることは非常に簡単です」と言及しました。
しかし、Samsungはスペースズームで撮影された月の写真が精細過ぎるという疑念に対して、「写真を撮影するときに画像のオーバーレイやテクスチャ効果は適用されていません。シーンオプティマイザーによりオブジェクト検出が混乱した場合、類似のオブジェクトに同じテクスチャパターンを実行してしまうなどのミスにつながるためです」と述べていますが、「実際にそのような処理が行われている」とibreakphotosさんは指摘しています。
https://gigazine.net/news/20230312-samsung-space-zoom-moon-shots-fake/