【清水 芽々】夫がリストラされ、乳飲み子を抱えて地方移住した37歳主婦…「高齢者のパシリ」「職場では村八分」 夢も希望も打ち砕く「奴隷生活」が待っていた
90年代終わりごろからブームになった「田舎暮らし」。これは2000年代後半から一斉に定年を迎えた団塊世代へ向けた
マーケティングであったと言われている。その後はしばらく下火になっていたが、コロナ禍のリモートワーク促進や密集・密接回避により、再び注目を集めるようになった。
「自然回帰」や「ストレスフリーの生活」など、耳障りの良い言葉を誘い文句に地方移住を促す広告などもあるが、
実際はそう甘いものではない。移住を考えている人もそうでない人も、「移住したものの、理想と現実のギャップにおののき、
再び都会に戻って来た」家族の話に耳を傾けて頂きたい。
「もう都会も会社も嫌だ…」
5年前、都内から数百キロ離れた東北地方に移住した佐久間久美さん(仮名・37歳)一家。きっかけは夫・陸人さん(仮名・33歳)のリストラだった。
「当時、夫は通信関係の会社で働いていました。誰もが知っている有名企業でしたが、サービス残業は当たり前で規定の有給休暇も取らせてもらえず、
パワハラ・セクハラは当たり前というブラック企業。
それでも夫は真面目に働き、上司の信頼を得てそれなりの評価も頂いてましたが、心身共に疲れ果てて行く同僚の姿を見るに見かねて、
会社に労働環境の改善を訴えた結果、リストラの対象となってしまいました。
あまりの理不尽さに夫は猛抗議したものの、結果は火に油を注いだだけ。会社都合の退職ということで退職金はある程度出ましたが、
通常は『退職(解雇を含む)から3ヵ月以内』と決められていた社宅の退去を『1ヵ月以内』と通告されました。
生まれたばかりの子供を抱えて行くところもなく、途方に暮れていたら、夫が『もう都会も会社も嫌だ。
どこか地方に行って、自分で何か仕事をしたい』と言い出したので、ネットで見つけた、地方自治体の『移住者支援プロジェクト』に申し込み、すぐに引っ越すことにしました」
「移住者支援プロジェクト」とは定住人口の減少や地域産業の後継者不足などの解消のため、地方自治体が中心となって、
都市部からの移住を促進、支援する事業のこと。自治体によって事業の名称や支援内容に違いはあるものの、
仕事や住居を世話してくれたり、生活全般をサポートしてくれる。特に子育て世帯の移住は町の活性化に繋がるとして優遇されることが多い。
「私たちが住んだところも、空き家をタダで貸してくれたり、地元企業への就職を斡旋してくれるところでした。
私の夫のように自分で起業したいとか、どんな仕事をすればいいのかわからないという人間に対しても
『自立支援制度』というものがあって、支援金をもらいながら、資格取得のためのプログラムや希望する職種の研修を受けることができたんです。
プロジェクトの担当者も優しくて親切だったし、地域の方も歓迎ムードいっぱいで、まさに至れり尽くせりといった感じでした。
『ここが私たちの新天地!』と夫とワクワクしたものです」
心から「来て良かった」と思ったが…
インバウンドの需要と将来性に目をつけ、古民家などを使って外国人旅行者向けの宿泊所をやりたいと考えた陸人さんは、
近くの温泉旅館に研修に行くことになった。
「私は私で、子供を育てながら地域の人達との交流を深めることにしました。将来宿泊所を始めた時のために、
観光名所を教えてもらってガイドの勉強をしたり、郷土料理を習ったりしてました。
地元の皆さんは本当に親切で心の温かい方ばかり。ここに移住して来て良かったと、心の底から思ったものです……この頃までは」
移住して3ヵ月。家も片付き、田舎の生活に慣れて来た頃から、久美さんの心はざわつき始める。
「不満というか、不信というか、何か納得がいかないという気持ちがふつふつと湧き上がって来ました。
住民の7割は65歳以上という高齢社会で、夫のような若い男性は少ないせいか『都合の良い労働力』として扱われてるような気になったんです。
https://news.livedoor.com/article/detail/23873289/