「産後の女性は全治2カ月の交通事故と同じぐらいのダメージを負っているんです」。ドゥーラ協会の代表理事を務める宗祥子さんはそう訴える。出産直後は子宮に大けがを負った状態で体力の消耗も激しい。特に産後6~8週間の「産じょく期」はホルモンバランスの急激な変化などで体調不良が起きやすい。本来はなるべく体を休めるべきだが、十分な休息が取れぬまま「ぶっつけ本番」で初めての育児に当たる人も多いという。
 時代や社会の変化も産後の環境が過酷化する一因になっている。3世代同居が当たり前だった時代には、子育ても家族のサポートが得られたが、核家族化の進展でそうした支援は困難になった。高齢出産のケースでは、生まれてくる子どもの祖父母は既に要介護状態ということもある。新型コロナの流行で里帰り出産を断念したり、気軽に外出できなくなったりした人も多い。
 心身の負担が増す中で、強い不安や孤立感を抱くようになると「産後うつ」や子どもへの虐待行為につながってしまうケースもある。
 東京都内で長年、助産院を営んできた宗さんはこうした状況に危機感を持ってきた。だが、一人一人の助産師が家庭のサポートにまで手を広げるゆとりはなく、産前・産後の支援に特化した人材が不足していた。「どうにかして、出産直後の女性を支えてあげることができないか」。そんな思いを募らせていた2009年、米国を訪れた際に産後ドゥ―ラの存在を知り、帰国後に国内でも普及を図ろうと協会を立ち上げた。

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