魚価低迷のクロダイが入れ食い状態、アサリの食害深刻…熊本県が駆除事業

熊本県沖の八代海でクロダイによる天然アサリの食害が深刻になり、県が駆除に乗り出した。魚価の低迷によって漁師がクロダイを
捕らなくなり、数が増えた可能性があるという。県は、外国産アサリが「熊本県産」として流通した問題の背景に
天然アサリの減少があるとみており、クロダイを駆除することで漁獲量を回復させ、産地偽装の撲滅にもつなげたい考えだ。

「入れ食い」
潮が満ちると、浅瀬に押し寄せた魚群が、海底の泥を掘り起こしていく。2021年6月、熊本県水産研究センターが
同県八代市の大島地区の海中に設置した水中カメラには、クロダイの群れが泳ぎ回る姿が収められていた。
その後、潮が引いた干潟には直径約1メートルの穴が開き、周囲にアサリの殻が散乱していた。

センターの山下幸寿次長(55)は「被害がここまで大きいとは思わなかった。これまでナルトビエイが捕食したと思われていたアサリも、
実はクロダイに食べられていた可能性がある」と分析する。

県は昨年10月、クロダイの駆除事業を始めた。特に食害の被害が大きい同県八代市の鏡町、八代の2漁協に委託。
はえ縄漁の仕掛けを海に入れる度、たくさんの釣り針にクロダイがかかり、「入れ食い状態」になっているという。

両漁協は今年2月までに計1821キロを捕り、県が1キロ当たり200円の処分費用を支出している。
県は新年度当初予算案にも、クロダイの駆除費を含めた資源回復事業の費用として1850万円を計上。
今後、胃の内容物から食べる量を調べ、どの程度駆除すればよいかを検討する方針だ。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230315-OYT1T50253/