埼玉県さいたま市のCさん(53歳)は、近郊農家の長男です。長年、会社勤めをしていましたが、早期退職して、お父さんが農業のかたわら経営している賃貸管理業を手伝っていました。

お父さんの資産は、市街化区域内農地が約3000坪、アパートが3棟、そのほか駐車場、貸し農地、資材置き場があり、相続税評価額は10億円に達します。ただし、借入金が2億円あるので、正味の資産額は8億円です。

アパートなどからは年間2000万円の賃料収入がありますが、固定資産税と管理費に年間500万円、ローンの支払いに同じく年間500万円、所得税・住民税が年間500万円ほどかかり、生計を一緒にしているCさん家族が自由に使えるのはわずか500万円しかありません。土地資産は多いものの現金が少ない、典型的な都市農家です。

私たちが相談を受けたとき、Cさんのお父さんは82歳。長年、農業に携わってこられましたが、数年前からはのんびり隠居生活を送っていらっしゃいました。ところが急に体調を崩して入院。検査の結果、肝臓がんで余命1カ月と言われてしまったのです。

「いったい相続税はいくら払うのか? どうやって支払えばよいのか? 今からでも節税する方法はないのか? もう目の前が真っ暗になってしまいました」とCさんは当時言っていました。

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