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ネコもネズミも夢を見る、最近の研究では魚やクモまで夢を見るらしいことがわかってきた
ネコは睡眠中に未来の狩りを思い描き、ラットは迷路の復習をする
チリのアタカマ砂漠の「月の谷」でくつろぐゴールデンレトリバー。
動物も夢を見るのだろうか。昼寝をするイヌを見て、そう思ったことがある人は多いだろう。
この問いに答えるのは容易ではない。そもそもヒトが夢を見る理由も、夢が重要である理由も、まだ解明されていないのだ。動物の夢の研究はさらに難しい。イヌたちは、うたた寝中になぜ鼻を鳴らしたり脚をばたつかせたりしたのかを教えてはくれない。
一方で、ネコが夢を見る証拠は見つかっている。動物の夢は、それをどう定義するかによっては興味深い意味を持つかもしれない。
「夢の研究を通じて、動物の感情、記憶、ひいては想像力といったさまざまな認知能力への理解を広げることができると考えています」と米サンフランシスコ州立大学の科学哲学者デビッド・M・ペーニャ・グスマン氏は言う。氏は近著に『When Animals Dream: The Hidden World of Animal Consciousness(動物たちが夢を見るとき:動物の意識の秘められた世界)』がある。
霊長類に感情があることは以前から知られているが、クモについてはどうだろう? 実は最近の研究により、クモにもレム睡眠のようなものがあり、視覚的な夢さえ見ている可能性があることが指摘されている。クモが夢を見るなどと言うと荒唐無稽に思われるかもしれないが、本当に見るかもしれないのだ。
「人々は夢のことを、非現実的で鮮明な要素をもつ作り話だと考えています」と米マサチューセッツ工科大学(MIT)の神経生物学者マシュー・ウィルソン氏は説明する。「これに対して動物の夢の研究は、睡眠中に起こる何が動物たちの学習や記憶、行動に影響を及ぼすのか、という観点から行われています」
ネコが見る夢
イエネコは、夢の研究で最初期から研究対象とされた動物の一つだ。睡眠研究の先駆者であるミシェル・ジュベは、1960年代に睡眠中のネコの行動を観察し、それを大きく変えさせる実験を行って、ネコが夢を見る証拠を発見した。
レム睡眠中のヒトは、夢を見るほどの激しい精神活動にもかかわらず、筋肉はほとんど動かない。この弛緩状態のおかげで、どんなにリアルな夢を見ていても、体を動かさずにいられるのだ。ジュベはネコの睡眠を調べたところ、脳幹の橋(きょう)と呼ばれる構造がレム睡眠を制御し、部分的な麻痺(まひ)を引き起こしているらしいことを発見した。
ジュベは、ネコの橋の一部を切除して、睡眠中の行動を劇的に変化させた。レム睡眠に入ったネコたちは、まるで覚醒しているかのように動きはじめ、狩りをしたり、ジャンプをしたり、毛づくろいをしたり、目に見えない脅威から身を守ったりするようになったのだ。
この実験から、眠っているネコの脳で起きていることが見えてきた。ジュベは、体は弛緩しているが脳は覚醒状態にあるこの眠りを「逆説睡眠」と呼んだ。
「この状態のネコたちは、覚醒しているとしか思えないような行動をとるのです」とペーニャ・グスマン氏は言う。
夢で迷路を復習するラット
日中に迷路を走ったラットは、睡眠中に同じコースを再び走っている可能性があることが研究によって明らかになっている。覚醒中のラットの海馬(記憶の形成と保存をつかさどる脳領域)は、迷路を進むときの神経細胞の「発火」パターンを記憶している。その後、このラットが眠っているときに、海馬が同じ発火パターンを再現していることから、ラットが迷路を記憶または再学習していることが示唆された。
2001年に学術誌「Neuron」に発表されたこの研究は、動物が複雑な夢を見ることを示唆する発見の1つだった。しかし、論文の共著者であるMITのウィルソン氏は、これは始まりにすぎなかったと言う。
「私たちが実施した他の実験でも、(睡眠中のラットが)過去の経験の記憶を想起する現象は、私たちが夢として経験するものと似ていることが示唆されました」
ウィルソン氏らによるラットの脳の研究から、睡眠中に迷路の記憶を想起しているときには、それに伴う視覚イメージが再活性化していることもわかった。つまりラットは、覚醒時に迷路で見たものを、睡眠中に見ていたのだ。同じことは聴覚や感情にかかわる脳領域にも当てはまり、ラットがレム睡眠中に迷路を再び走るときには、これらの領域も再活性化することがわかっている。