手塚は「基本的人権」だけは絶対に守る必要があると説く。そして、「どんなに強烈な、どぎつい問題を漫画で訴えてもいいのだが、基本的人権だけは、断じて茶化してはならない」と述べる。そして、以下の3点を守るべきと語っているのだ。

・戦争や災害の犠牲者をからかうようなこと。
・特定の職業を見くだすようなこと。
・民族や、国民、そして大衆をばかにするようなこと。

 この3つだけは、どんな漫画でも必ず守ってもらいたいと手塚は言う。初心者に向けた言葉というよりは、むしろプロになった漫画家も肝に銘じるべき内容であろう。そして、最後にこう述べる。

「これをおかすような漫画がもしあったときは、描き手側からも、読者からも、注意しあうようにしたいものです」

本書には、こうした漫画に対する手塚の考えが存分に盛り込まれている。約46年前に出版された本ではあるが、内容は普遍的だ。漫画家を目指す若い世代はぜひ手に取るべき一冊である。

文=元城健
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/4d0ce88eb714e0c623080f26ec21866cf1db468e&preview=auto