「台湾有事」を大声で唱えるのは、アジアでは日本が最後になるかもしれない

駐中国大使、台湾有事「想定せず」。
 3月17日付で時事通信が配信した記事の見出しだ。発言の主は、垂秀夫駐中国大使。記事が流れた直後から、一部で騒がしい反応があったのは言うまでもない。日本ではいま「台湾有事ありき」で様々なことが忙しく動いているのだから当然だろう。
 記事によれば垂大使は、台湾有事について個人的な見解とした上で、「本質的なことで見た限り(中国に)政策の変更はない。予見できる将来、中国が武力で台湾を統一することは想定していない」と述べたという。大分市で行われた講演での発言だ。
 これに対し、早速ネットのなかでは賛否と同時に発言の意図と立場を勘繰る書き込みがあふれた。
 しかし、そういう話なのだろうか。
中国は明らかに軟化している

 自らが得た情報に基づききちんと分析を加えて発信しただけの話で、むしろ誠意を評価すべきだ。ただ内容そのものは、中国を細かく分析している専門家であれば、ごく当たり前に行き着く結論といえなくもない。
 筆者も今年2月に上梓した『それでも習近平政権が崩壊しない4つの理由』のなかで、それについて一章分を割いて詳述している。
 あらためて少し触れておけば、中国は2005年の反国家分裂法の文言、「武力行使は放棄しない」などの表現を繰り返し用いているが、2019年からは明らかにその前後の表現を緩めているということだ。習近平国家主席自身「中国人は中国人と戦わない」と何度も繰り返し、間接的ながら大規模侵攻の必要性を否定しているのだ。
 要するに対台湾における習政権のトレンドは、明らかに融和へと向っているのだ。そして、その最大の理由は合理性にある。

https://news.yahoo.co.jp/byline/tomisakasatoshi/20230322-00342343