ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、西側の同盟国から追加の軍事支援が届くまでは、ロシアに対する反攻を開始することはできないとの考えを示した。25日付の読売新聞インタビューで語った。

ゼレンスキー氏は、追加の戦車や大砲、M142高機動ロケット砲システム(HIMARS)がなければ、ウクライナ部隊を前線に送り出すことはできないと、読売新聞のインタビューで述べた。

また、ウクライナ東部の戦況は「良くない」とした。

「我々はパートナー国から弾薬が届くのを待っている」

今後予想されるウクライナの反攻について問われると、「まだ始められない。戦車や大砲、長距離ロケット砲がなければ、勇敢な兵士を前線に送り出すことはできない」と述べた。

そして、「あなた方に政治的な意思があるなら、私たちへの支援方法を見つけられる。我々は戦時下にあり、待つことができない」と付け加えた。

侵攻をめぐっては数週間前から、ウクライナ側がロシア軍に対して春の反攻を開始するという話が浮上していた。ウクライナの指揮官たちはその時が間近に迫っている可能性を示唆している。ウクライナ陸軍の地上部隊司令官オレクサンドル・シルスキー氏も、「非常に近いうちに」始まる可能性があると述べていた。

一部のアナリストは、ウクライナ軍はロシア軍の戦意をくじくため、反攻について発言を繰り返しているのだろうと指摘する。ロシア軍の司令官が東部バフムートなど特定の場所に部隊を集中させるのではなく、前線に沿って部隊を展開させ、その勢力が手薄になることが、ウクライナ側の狙いではないかと言われている。

アナリストの中には、すぐにでも反攻が可能だとの見方もある。米シンクタンクの戦争研究所 (ISW)は先週、ロシア側の攻勢そのものに失速の可能性があるとし、こう結論づけた。「したがってウクライナがイニシアチブを取り戻し、現在の前線の重要部分で反攻を開始できるだけの態勢が、十分とれている」。

ただ、ゼレンスキー氏はもっと悲観的だ。同氏はこれまで、西側の同盟国が兵器の輸送スピードを加速させない限り、戦争が何年も長引く可能性があると警告してきた。しかし、西側諸国からの装備の不足が原因で反攻時期が遅れるかもしれないと明言したのは、今回が初めてだ。

今回の発言には、兵器供与を加速を促したいという願いだけでなく、各国の対応が速やかでないと見るゼレンスキー氏の苛立ちも表れている。

ウクライナの同盟国は、戦車や大砲、より長距離のミサイルシステムの追加供与を約束している。ただ、約束したものをウクライナに届けるのに苦労している国もあれば、装備の輸送に予想以上に時間がかかっている国もある。

西側当局者は軍事支援はウクライナに届きつつあるが、訓練や計画に時間を要していることを認めている。また、ウクライナでは冬に凍結した地表が溶け出してぬかるんでいるため、どの軍にとっても、容易に移動を開始したり、前線を突破したりすることが難しくなっているとも指摘している。

ウクライナの反攻をめぐり、とりわけその開始時期や場所について憶測が飛び交っている。ウクライナ国防省は今後の計画について予想し合うのを止めるよう求めている。

同省のハンナ・マリャル次官はソーシャルメディア上で、軍事計画を公にする権利があるのは大統領と国防相、軍総司令官の3人だけだと主張した。

「そのほかの全ての人は、3人の言葉を引用することしかできない」と、マリャル次官は書いた。「反攻について、専門家に質問するのをやめてください。この話題に関するブログや投稿を書くのをやめてください。我が軍の軍事計画について公に議論するのをやめてください」。


https://news.yahoo.co.jp/articles/542b39816eb13f7bfc6ed3f927ee52669f2c9de1