――「テキ屋」も「メルカリ」も、警察の間違った解釈に引きずられる形で私たちも勘違いしてしまったと思うんですが、ほかにも世論がボドイに対して見誤っていることはありますか。

【安田】本当に悪かどうかはともかく、いまや日本では「中国は悪」という設定は、実質的に国民のコンセンサスとして存在するじゃないですか。すると、「在日中国人の犯罪やマナー違反を許すな」といったことも、公共圏で容赦なく言えちゃう。極論、差別意識から出ただけの排外主義的な言説ですら、大義というオブラートに包んで言えてしまう。でも、在日ベトナム人に関してはそれが真逆なんです。排外主義とは関係がない現実的な問題点の指摘すら、なんとなく難しい。

そもそも、技能実習生をはじめとしたベトナム人の労働者はお国の政策で呼んできた人間という前提があるので、自動的に「かわいそう」という属性が付加され、そんな存在がやむにやまれず犯罪に手を染めたという図式になる。なので、どうしても突っ込み不足になるし、下手すると取材をする前から同情的立場になってしまっているフシまであります。

https://president.jp/articles/-/67683?page=3