孤独死で"宙に浮く”空き室 「どんな金額でも…
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マンションでの孤独死は珍しいわけではない。こうした空き室が出た場合、住人たちはどんな対応に迫られるのだろう。
【写真】住人の高齢化で空室が目立つマンション。亡くなっても名札がある人もいる
4年前、北九州市のあるマンションの上階。4LDKで1人暮らしをしていた60代のタクシー運転手の男性が亡くなっていた。
椅子にかかった背広やワイシャツといった遺品だけでなく、冷蔵庫で腐敗した食べ物も放置されたまま。「窓を開けて風を通すこともできない。マンション全体の資産価値が下がってしまう」。管理組合の理事長(82)は渋い顔だった。
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管理組合としては、新たな所有者が見つかるのが理想だ。居住者同士のコミュニティーを守ることだけが理由ではない。空き室が増えると、管理費や修繕積立金といった維持費負担のしわ寄せが、他の所有者たちにいきかねない。
持ち主が亡くなると、法的には妻子らが相続する。相続人がいなければ管理組合が、部屋や遺品の清算に当たる「相続財産管理人」を、家庭裁判所に選任してもらう。その財産管理人が買い手を探す。
この男性の場合、別れた妻や2人の子どもは相続を放棄した。財産管理人として弁護士が選ばれている。
しかし、このマンションも既に築40年以上。4カ月前に購入希望者が数回訪れたものの、その後、話は進んでいないという。
財産管理人の選任手続きには数十万~約100万円かかる。管理組合の懐事情も潤沢ではなく、こうした経費も上乗せして売るのが一般的だが-。「住人が室内で亡くなった『事故物件』だから、どんな金額でも売れさえすれば御の字です」(組合関係者)
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「珍しいオートロック付き」として売りに出されたマンションだった。新築当時は1戸2千万円ほど。PRチラシには「隣人を選ぶ」と書かれ、「購入者は会社の社長や医者が多かった」と理事長。景気が良かった「製鉄の街・北九州」を象徴するようなビルだったとみられる。